谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士

経営理念・事業戦略策定、Webマーケティング・法人営業力強化などを支援している人間の頭と腹の中身。

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僕が隔月で主宰しているドラッカー勉強会の第6回が終了しました。毎回、「ドラッカー名著集全15冊」から1冊を選んで読後感想を共有するというもので、今回の題材は『創造する経営者』でした。

1964年に初版が発表された本書は、世界で初めて「事業戦略」について論じられた本だとされます(同時期にロシアの経営学者イゴール・アンゾフも戦略についての書籍を発表しているので、どちらが戦略の父であるかは意見が分かれるところではあります)。

「戦略」という軍事用語を企業経営に持ち込むことには反対の声もあったようで、原題にはStrategyという言葉は用いられておらず、Managing for Resultsとなっています。

現在では事業戦略と言うと、事業の将来目標を設定し、現状とのギャップを埋める施策を立案することを指します。つまり、事業の明日を創造することを意味します。しかし、ドラッカーは、明日を創るためにはまずは今日の事業で成果を上げなければならないとし、現在の事業を診断することに多くのページを割いています。

その内容はかなり込み入っているのですが、要するに各製品・サービスの「利益貢献度」や「市場におけるリーダーシップと見通し」を分析し、両者が良好な製品・サービスに一級の人材と資金を投入しなければならない、ということだと僕は解釈しています。

これを図で示せば2枚目の図のようになります。「利益貢献度」と「市場におけるリーダーシップと見通し」の2軸でマトリクスを作ると、製品・サービスを4タイプに分類することができます。

①「利益貢献度」大&「市場におけるリーダーシップと見通し」大=今日の主力製品
②「利益貢献度」小&「市場におけるリーダーシップと見通し」大=明日の主力製品
③「利益貢献度」大&「市場におけるリーダーシップと見通し」小=昨日の主力製品
④「利益貢献度」小&「市場におけるリーダーシップと見通し」小=失敗製品

④は企業の資源を浪費する存在であるため、撤退します。その一方で、③で稼いだ利益を②に投資して①に育て上げていくことが重要となります。

この考え方は、後にボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によって「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」というフレームワークにまとめられました。PPMでは、「相対的市場シェア」と「市場の成長率」の2軸でマトリクスを作って製品を4つに分類します。

①「相対的市場シェア」大&「市場の成長率」大=花形
②「相対的市場シェア」小&「市場の成長率」大=問題児
③「相対的市場シェア」大&「市場の成長率」小=金のなる木
④「相対的市場シェア」小&「市場の成長率」小=負け犬

④からは撤退する一方で、③で稼いだ利益を②に投資して①に育て上げていくべきだというのがPPMの趣旨です。

ドラッカーは、「利益貢献度」を判定する際に、ユニークな考え方を用いています。

通常、それぞれの製品・サービスの利益を算出する場合には、まずは変動費を引いて限界利益を求めた上で、共通費用である固定費を製品・サービスごとに按分し、それを限界利益から引きます。

ところが、営業費、物流費、倉庫保管費、事務作業費、その他間接費の按分は、あまりにも恣意的に行われていることをドラッカーは問題視します。ドラッカーは、それらのコストは「作業量」によって按分すべきだと主張します。

たとえば、A、B、Cという3つの製品を扱っている営業担当者の人件費について考えてみましょう。我々はしばしば、各製品の粗利から、営業担当者の人件費を3等分した額を引いた金額をそれぞれの製品の利益としてしまいがちです。しかし、実際には、A、B、Cの製品を販売する作業量には差があります。

もちろん、営業担当者がそれぞれの製品を販売するのに何時間を要したかを正確に測定することは困難です。とはいえ、例えば顧客への訪問件数、作成した見積書の数など、各製品を販売するのに要した労力を”代表する”いくつかの指標を用いることで、より実態に近い利益を算出することが可能になるとドラッカーは言います。

勉強会のメンバーは、「本書は『選択と集中』の重要性について書かれた本だ」と端的にまとめてくれました。一方、別のメンバーは、「『専門化と多角化のバランス』を取ることが大切だとも書かれている」と指摘しました。

ドラッカーは次のように言います。

「企業は、製品や市場を最終用途において多角化し、基礎的な知識において高度に集中しなければならない。あるいは、知識において多角化し、製品や市場や最終用途において高度に集中化しなければならない。この中間では、満足すべき成果はあげられない」(p279-280)

集中と多角化のバランスを取るには2つの道がある、というわけです。ところが、知識に関しては、ドラッカーは別の箇所で次のようにも述べています。

「多くの領域において卓越することはできない。しかし、成功するには、きわめて多くの領域において並以上でなければならない。いくつかの領域において有能でなければならない。1つの領域において卓越しなければならない。

市場が経済的な報酬を与えてくれるような真の知識をもつためには、集中が必要である」(p155-156)

卓越した知識は集中によって得られます。となると、卓越した知識をいくつも持った上で製品、市場、最終用途において高度に集中するという道は、実は現実的ではなく、知識において高度に集中し、製品、市場、最終用途において多角化するのが戦略の定石だと言えそうです。

集中した知識を強みとして活かす経営は、ゲイリー・ハメル、C・K・プラハラードが後に「コアコンピタンス経営」としてまとめました。

しかし、ここで僕は思うのです。確かに、ドラッカーの言う事業戦略やハメルらのコアコンピタンス経営を実現できれば、一流の偉大な企業になれるでしょう。しかし、果たして卓越した知識や強みに集中することが可能な企業は、一体どれほど存在するのか?と。120点の競争力がある武器を持つ企業が一体どれほど存在するのか?と。

100点のものを120点へと磨き上げるには、途方もない努力が必要です。しかも、努力が必ず報われるとは限りません。それに比べれば、60点のものを80点へと引き上げるのは割と簡単です。結果もすぐに出ます。

非常に雑駁な見立てですが、多くの中小企業は、80点の武器1個で勝負を挑んでいます。だから、120点の武器を持つ大企業やグローバル企業と正面衝突すると、途端に苦境に陥ってしまいます。

一方で、中小企業やそこで働く人たちには、60点ぐらいの未活用の資源がたくさんあるはずです。卓越性と呼ぶにはほど遠いが、他社/他人よりもちょっと得意、他社/他人よりもちょっと好き、といった類のものです。

1個の80点を100点、120点へと強化するのではなく、同じ労力を使って60点からたくさんの80点を生成する。それらの組み合わせによって独自性を発揮する。一流の偉大な企業にはなれなくても、その独自性によってコアなファンを獲得し、大企業やグローバル企業との競争を避けながら、何とか生き残っていく。

そういう経営の方向性があってもよいのではないか?と僕は考えています(最近僕がよく言っている「新しい日本的経営」というものです)。

120点の卓越性を持つ一流の企業や人材は、誰もがうらやむところです。ただ、一流になることが楽しいかと言われると、それは別問題です。例えば、大谷翔平選手は確かに素晴らしいですが、大谷選手のような人生が楽しいとは断言できないように感じます。

大谷選手が好む「塩パスタ(文字通り、塩だけで味つけされたパスタ)」を見て、侍ジャパンで同じチームだったソフトバンクの近藤健介選手が「人生楽しいの?」と疑問を呈した、というエピソードもあります。

我々は皆が大谷選手のように一流のパフォーマンスを残すことができるわけでもないですし、またそう望んでいるわけでもありません。それなりのパフォーマンスで、楽しく仕事をしたいという企業、楽しく人生を送りたいという人も相当数いるはずです。

楽しさの条件の1つは、「様々なことがそこそこできること」だと思います。多趣味な人、多芸な人は独自のポジションを築いて楽しそうにしていますし、見ている側も楽しい気持ちになります。

芸能界で言うと、所ジョージさんが近いかもしれません(もっとも、芸能界自体が一流の才能の集まりなので、その中で例を探すことは適切でないのかもしれませんが…)。

仕事とは厳しく辛いものだという価値観は、今の時代にそぐわないものです。最近は「仕事を楽しむ」という表現も使われますが、仕事を意図的に楽しまなければならないということは、仕事とは本質的に苦行であることを前提にしています。そうではなく、「仕事自体が心の底から楽しい」と思えるような新しい経営学を僕は模索していきたいです。

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『マネジメント・フロンティア』(1986)、『すでに起こった未来』(1994)、『未来への決断』(1995)と同様、ドラッカーが様々な雑誌に寄稿した記事や論文を1冊にまとめたものです。本書はドラッカーが80歳前後に書き記した文章が中心となっており、歳を重ねていよいよ筆の勢いが増すのには、いつもながら驚かされます。

本書を読んでみて、「ドラッカーが嫌いなもの」が5つあることに気づきました。

【①進歩主義】
1873年、それまで続いていた自由放任の時代は、ウィーン市場の崩壊とそれに続く各地の恐慌によって終わりを迎えた。代わりに、政府が進歩的大義を掲げ、社会主義的な政策を推し進める時代が続いた。しかし、それも1973年の石油ショック、ドルの変動相場制移行によって終わった。

政府は、様々な社会的課題を解決するにはあまりにも大きくなりすぎた。大きすぎる政府による画一的な施策では、社会の諸問題を解決することができない。特定の課題にフォーカスすることで成果を上げることに長けた民間の力を借りる、すなわち「民営化」が求められている。

【②ケインズ経済学】
ケインズ経済学は、主権国家が世界の経済における圧倒的に支配的な経済単位であり、効果的な経済政策を取り得る唯一の経済単位であることを前提としている。

しかし、ヒト、モノ、カネ、情報といった資源がグローバル規模でこれほどまでに密接に行き交い、つながり合っている現代においては、ケインズ経済学はもはや機能しない。今求められているのは、国内経済とグローバル経済とを融合させる新しい経済理論である。

【③大いなる善を追求する非営利組織】
非営利組織は企業とは異なり決算がないため、自らの事業の有効性を判断できるようにするために、企業以上に明確な使命を必要とする。しかし、使命は大いなる善であってはならない。「世界中から貧困を撲滅する」といった、およそ達成不可能な使命を設定してはならない。

非営利組織の使命は、ターゲット顧客を想起することができ、自らの具体的な行動につながるものでなければならない。そのような使命によってこそ、非営利組織は自らの成果を測定することが可能となる。

【④法人資本主義】
法人資本主義とは、株主、金融機関、顧客、取引先、従業員など、企業を取り巻くあらゆる利害関係者の利益をバランスさせることが経営者の責任であるとする考え方であり、1960年代に注目されたものである。

しかし、啓蒙専制君主のように振る舞う大企業の経営者は、目立った成果を上げることができなかった。大企業経営者の失政は、その株式を所有する年金基金のパフォーマンスにも影響を及ぼし、運用実績を欲しがった年金基金は乱暴な敵対的買収に簡単に応じてしまった。

経営者の責任とは、「富の創出能力を最大化すること」でなければならない。そして、富の源泉とは、古典的経済学が言うような土地でも、マルクス経済学が言うような労働でもなく、知識に他ならない。

【⑤一律のコスト削減策】
本社のスタッフ部門は、営業費、マーケティング費、研究開発費、その他間接費を一律何%削減せよと全社に命じることがある。そのようなキャンペーンは一時的には効果があっても、すぐに再び元のコスト水準に戻ってしまうものである。

コストそのものに着目するのではなく、社員の活動に焦点を当てなければならない。そして、「社員が多大な労力を費やしているのに、大した成果につながっていない活動とは何か?」、「その活動を今すぐ止めても事業への悪影響はないか?」と問わなければならない。

こうしてドラッカーが嫌いなものを並べてみると、ドラッカーは「一部の限られた人間が、統一された高邁で普遍的な理想を実現させること」が嫌いなのだろうと感じます。つまり、革新主義的な発想が嫌いなのです。ドラッカーも自らのことを保守主義者だと言っています。

18世紀の啓蒙主義に端を発し、19世紀後半~20世紀前半にかけて世界を席巻した革新主義は、忌まわしき全体主義をもたらしたという暗い過去があります。ドラッカーは初期の著書『「経済人」の終わり』(1939)でこのことを指摘しました。ドラッカー自身、ナチスの迫害を逃れてウイーンからアメリカへ渡った人間ですから、全体主義のことを強く敵視しています。

とはいえ、革新主義的な大きな理想がパラダイムシフトを引き起こし、文明を大きく進歩させたという点も否定できません。ドラッカーは革新主義者の情熱、意思、勤勉、努力をやや過小評価しているようで、そこにドラッカーの1つの限界があるのかもしれません。

必要なのは、革新主義の負の側面が露呈しないよう、保守主義と革新主義とを調和させる発想だと思います。

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著者の西口一希氏は、P&G、ロクシタンを経て、「スマートニュース」をアプリランキングで100位圏外からNo.1へと伸ばした方です。その実践的なマーケティングの方法が惜しみなく解説されています

まず、顧客を次の5つのセグメントに分類します。

①ロイヤル顧客:認知あり/購買頻度・高
②一般顧客:認知あり/購買頻度・中~低
③離反顧客:認知あり/購買経験あり/現在購買なし
④認知・未購買顧客:認知あり/購買経験なし
⑤未認知顧客:認知なし

次に、①~④については、さらに「積極/消極ロイヤル顧客」、「積極/消極一般顧客」、「積極/消極離反顧客」、「積極/消極認知・未購買顧客」に分けます。「その製品を次回も購入したいか?」という問いに対してYesと回答する人は「積極」、Noと回答する人は「消極」に分類されます。

これによって、顧客は全部で9つのセグメントに分けられます。

購買頻度が高いロイヤル顧客でさえ積極/消極に分けるのは興味深い視点です。というのも、購買頻度が高くても、その製品やブランドが心から好きで頻繁に購入しているのではなく、単に他に選択肢がないからという場合もあるためです。

例えば、自宅の近くに1軒しかスーパーがないとして、週に何度もそこで買い物をする顧客は、購買頻度だけを見ればロイヤル顧客です。しかし、そのスーパーに取り立てた差別性がなければ、近くに魅力的なスーパーが進出してきた途端に離反するでしょう。その意味で、この顧客は消極ロイヤル顧客なのです。

顧客を9つのセグメントに分類した上で、認知度や購買頻度を高める(⑤⇒④、④⇒③、③⇒②、②⇒①へと移行させる)ための施策を「販売促進」、次回の購買意欲を高める(「消極」から「積極」へと移行させる)ための施策を「ブランディング」と呼びます。

販売促進にせよ、ブランディングにせよ、顧客にとって独自性と便益をもたらす「アイデア」が必要だと著者は言います。そして、アイデアを考え出す際に大切なことが2つあります。

1つは、アイデアには「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」の2つがあり、プロダクトアイデアが絶対的に必要で、コミュニケーションアイデアはプロダクトアイデアに従うものだということです。

言い換えれば、製品やサービスそのものに独自性と便益がなければならず、例えば広告やDMなど、顧客とのコミュニケーションだけがどんなに魅力的でも意味はありません。製品やサービスの差別化が難しい現代において、とかく我々は奇をてらった、凝ったCMなどに頼りたくなりますが、それだと成功はおぼつかないと著者は手厳しいです。

もう1つは、本書のタイトルにもありますが、アイデアを導くための調査は、統計学的に有効な一定のサンプル数を集めなくてもよく、極端なことを言えば「たった1人の顧客の声をじっくり聴く」だけで十分だということです。

自分が愛するたった1人のためにプレゼントを贈る場合と、1,000人に受け入れられるプレゼントを贈る場合とで、どちらの方がより魅力的なプレゼントを思いつきやすいか考えてみると解りやすいでしょう。

著者は、スマートニュースの認知度や使用頻度を上げるために、「英語ニュースチャンネル」と「クーポンチャンネル」という2つのプロダクトアイデアを実践しました。前者は著者の妻の意見から導かれ、後者は著者の知り合い数名から実際にスマホを使う様子を見せてもらううちに思いついたものだそうです。

僕も、著者のように、少数の顧客の声にじっくりと耳を傾け、少数の顧客の行動をじっくりと観察することで、顧客の潜在ニーズを抽出するという方法には大賛成です。

経営コンサルタント/中小企業診断士という仕事柄、多くの企業の新規事業計画書を読む機会がありますが、潜在顧客のことを深く考察している計画書は残念ながら非常に少ないです。

複数の統計データを組み合わせて、独自に需要予測をしているならまだマシな方です。

インターネットで簡単に手に入る市場調査会社の公表データを用いて、「この市場は成長が見込まれるから、この市場への参入を決めた」と安易に結論づけているケースが多すぎます。あまり腕のよくない外部のコンサルタントに計画書の作成を丸投げすると、こういうことがよく起きます。

皆が同じデータを見て、同じ市場に同じように参入したら、同質化してしまいます。企業は顧客から選ばれることによって存続し、利益を上げることができます。そして、顧客から選ばれるための源泉は、差別化です。

差別化のアイデアは、平均的な顧客のニーズからは得られません。誤解を恐れずに言うと、少し歪んだ顧客ニーズからもたらされるものです。だから、平均を代表しないような、少数の潜在顧客に敢えて着目する必要があるのです。

ところで、少数の顧客を簡易的かつ具体的にイメージする手法として、特定の年齢、性別、仕事、家族構成、ライフスタイル、価値観などを持った仮想の人物を設定する「ペルソナマーケティング」と呼ばれるものがあります。

僕も何社かでペルソナを見せてもらったことがありますが、「これは結局のところ、企業が自らのマーケティング施策を説明しやすくするために、自社都合で設定しているにすぎないのではないか?」とモヤモヤしたものを感じていました。

著者はペルソナマーケティングに対して、次のように痛快な批判を加えています。

「複数人で会議室にこもったり、合宿をしたりして、『当社のお客様はこんな方……』と作ったものの、実態としてそれは多種多様な方々の組み合わせであり、実際には存在しない(中略)

そんな時間を使うくらいなら、実在のロイヤル顧客さんの話を徹底的に聞いて、ご本人が自身を理解している以上にこちら側が理解するくらいのN1分析をしたいです」(p83)

マーケターは外の世界に出て、リアルの顧客に会いましょう。

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月2回通っているクリニックで軽い不整脈が見つかりまして(汗)、医師と色々話した結果、疲労が蓄積しているだろうから、ちょっと仕事をセーブしてはどうかと助言を受けました。そのため、5月はかなり仕事量を抑えています。

代わりに、何か楽しいことをしようと、久しぶりに水曜どうでしょうのDVDを買いました。

僕は根っからのどうバカで、以前はどうでしょうのDVDをたくさん持っていました。しかし、数年前に抜き差しならぬ事情があってほとんどの家財を処分しなければならなかった時に、どうでしょうのDVDも売ってしまいました。

それからしばらくどうでしょうのDVDを買っていなかったのですが、最近また欲しくなって、久しぶりに購入したのが『原付日本列島制覇』です。

2006年の『ヨーロッパ20か国完全制覇』から4年後の2010年に収録され、東日本大震災により被災地をはじめ日本中が消沈していた2011年に、笑いと勇気を届けてくれた伝説の企画です。

どうでしょうの企画で「カブに外れなし」と言われるだけのことはあり、やはり面白いの一言に尽きます。第6夜でミスターが大爆発するシーンは圧巻です。

重さ14㎏もあるマルシン出前機を意味なくカブに積んで、東京から三重県の伊勢まで走ってきたミスターが、翌日、和歌山県の龍神温泉まで約200kmの道もマルシンを積んで走るかどうかを賭けて、藤村Dと早食い対決をすることになります。

食材として選ばれたのは、伊勢名物としてあまりにも有名であり、かつ、その強烈な甘味ゆえにミスターがあまりにも大嫌いな「赤福」。それをお互いにひと箱食いしようというわけです。

ミスターは赤福を一気に4個食いし、目をひん剥き、口に含んだペットボトルの水を鼻から逆噴射させ、涙を流しながら、魂を削って何と魔神・藤村Dに奇跡的に勝利します。

ところが、藤村Dが「マルシンは後半の100kmだけ免除」と言ったのを皮切りに、極悪人・大泉洋さんが、「100km走り切った時点で、もう一度甘いもの早食い対決をし、ミスターが勝ったら残りの100㎞もマルシンを免除しよう」と意味不明な提案をし、ミスターの渾身の勝利を台無しにしてしまのでした。

個人的にもう1つ大好きなシーンがあります。それは、第9夜の前枠です。

原付日本列島制覇では、前枠・後枠で大泉さんが坂本龍馬に、ミスターが岩崎弥太郎に扮して(2010年に大泉さんがNHKの大河ドラマ『龍馬伝』に出演していた影響です)、HTBの旧社屋の裏にあったお馴染みの公園でコントを繰り広げます。

弥太郎はネギや大根、鳥かごなど、色んなものを背負って商売をするものの、一向に売れません。龍馬は「商売は目立たにゃいかんぜよ」と言って、弥太郎に無茶なチャレンジをさせます。

最初は雪の公園の高台をそりに乗って滑ってくるだけだったのですが、放送回を重ねるごとに、そりに立ち乗りしろだの、ラッパを吹きながら滑ってこいだのと、要求がエスカレートしていきます。

にもかかわらず商売が全く軌道に乗らない弥太郎が業を煮やして、「わしゃ商売を辞める」と言い出したのが第9夜です。弥太郎の言葉をうつむきながら聞いていた龍馬は、急に身体を起こすと、弥太郎に張り手をかまし、弥太郎を雪の上に押し倒します。

藤村Dが爆笑していたので、この動きは台本になく、龍馬がとっさの思いつきでやったのでしょう。

これだけでも十分に面白いのですが、龍馬は今回のチャレンジとして、手品師が使うようなアイマスクをつけ、さらに皿回しをしながら立ち乗りで滑ってくるよう弥太郎に命じます。

弥太郎がアイマスクをつけようとしたところ、アイマスクが小さかったのか、ゴムがプチンと切れてしまいます。「小っちゃくてつけれんぜよ」と抗議する弥太郎に、龍馬がもう一発張り手をかまして、2人で雪の上を転げ回ります。このシーンがおかしくて仕方ないのです。

赤福の甘いもの対決にせよ、弥太郎チャレンジにせよ、ミスターにとっては勝ち目のほとんどない負け戦です。それなのに勇猛果敢にも挑み、案の定ひどい目に遭った上、さらに追い打ちをかけられるという構図が、何ともどうでしょうらしいと感じます。

僕は、単にどうでしょうが好きなだけではなく、どうでしょう的な生き方を「新しい日本的経営」として昇華させたいと思っています。

一般的な経営とは、組織の明確な目的、使命、理念を掲げ、強みを活かしてそれらを実現する戦略を論理的に構想し、必要な経営資源を幅広く調達して、戦略を計画的に実行しようとするものです。

ところが、どうでしょうは旅番組でありながら、旅の目的(=どこかの目的地に着くこと)には大して意味がありません。どうでしょう班の4人は、本人たちも白状しているように、テレビ番組制作のノウハウを持っていたわけでもありません。予算が限られれていたため、旅の途中で見つかるありものを何とか拾い上げ、偶発的な出来事から大きな笑いを生み出してきました。

レギュラー放送終了から20年以上が経過しても、未だに(僕を含む)根強いファンが全国にいることを踏まえると、どうでしょうには人々の共感を呼ぶ普遍的な何かがあるのではないでしょうか?

原付日本列島制覇に関して言えば、「負け戦に敢えて突入する」、「負けをもう1回重ねる」ことが、予想外に楽しい結果を生むことがあると考えられます。

通常の経営では、負け戦に首を突っ込むことは愚策であり、負けをさらに続けて傷口を広げるなどというのはご法度です。リスクは可能な限り回避し、仮に損失が生じたら、早く損切りをするのが定石です。

しかし、もしかしたら、例えば失敗すると解っている製品開発に意図的に挑戦し、案の定失敗が見えてきた段階で、(組織が傾かない程度に)もうひとあがきして、さらに足を踏み外すことが、かえって組織にとって偶然の学びをもたらすということがあり得るのかもしれません。

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【書き下し文】
子夏(しか)が曰(い)わく、賢(けん)を賢として色に易(か)え、父母に事(つか)えて能(よ)く其の力を竭(つく)し、君に事えて能く其の身(み)を致(いた)し、朋友(ほうゆう)と交わるに言いて信あらば、未だ学ばずと曰(い)うと雖(いえ)ども、吾れは必らずこれを学びたりと謂(い)わん。
(学而第一7)

【現代語訳】
子夏がいった、「すぐれた人をすぐれた人として〔それを慕うことは〕美人を好むようにし、父母に仕えてはよくその力をつくし、君に仕えてはよくその身をささげ、友だちとの交際ではことばに誠実さがある、〔そうした人物なら、だれかが〕まだ学問はしていないといったところで、わたしはきっと学問したと評価するだろう。」

子夏は、孔子の弟子の中で特に優れた「孔門十哲」に数えられる人物の1人です。

徳に秀でていたのが顔淵(がんえん)、閔子鶱(びんしけん)、冉伯牛(ぜんはくぎゅう)、仲弓(ちゅうきゅう)、言語に秀でていたのが宰我(さいが)、子貢(しこう)、政治に秀でていたのが冉有(ぜんゆう)、子路(しろ)、そして文学に秀でていたのが子游(しゆう)、子夏です(先進第十一3)。

僕は、今回紹介する文章に、企業経営における重要な4つのエッセンスが凝縮されていると感じます。

<①賢(けん)を賢として色に易(か)え>
企業は「顧客は常に賢い」ととらえなければなりません。ピーター・ドラッカーは『創造する経営者』の中で、顧客は常に合理的であると述べました。企業からするとどんなに非合理的に見える行動であっても、顧客にとっては必ずそうする理由があるのです。

顧客の非合理を企業都合で是正するのはご法度です。顧客がそうするのは、何か実現したいことがあるからです。裏にある真のニーズをとらえることがマーケティングの鉄則です。

企業は顧客のことを美人を愛するように大切にしなければなりません。我々は、自分が愛する人のためなら、「どんなものが好みだろうか?」、「何をしてあげたら喜ぶだろうか?」と一生懸命アイデアをめぐらせることができます。それと同じ熱量を持って、顧客に接する必要があります。

<②父母に事(つか)えて能(よ)く其の力を竭(つく)し>
企業にとっての父母とは、長年受け継がれている経営理念のことだと考えます。『ビジョナリーカンパニー』シリーズで知られるジム・コリンズは、偉大な企業とそうでない企業とを分けるのは、経営理念をどこまで本気で実践しているかどうかだと指摘しました

経営理念を戦略、ビジネスモデル、組織構造、外部とのパートナーシップ、業務プロセス、予算配分、情報システム、人材の採用・育成、評価制度など、企業という構造物の隅々にまで浸透させなければなりません。

経営理念で「革新的な行動」を推奨しておきながら、製品ポートフォリオが保守的で、外部パートナーとはなれ合いの関係が続き、業務プロセスが旧態依然としているようでは、偉大な企業にはなれません。わずかな矛盾でも放置することは許されないのです。

<③君に事えて能く其の身(み)を致(いた)し>
上司に仕える際に重要なのは、上司の言うことを聞くことではありません。「上司の成果に貢献すること」です。我々は、自分自身に設定された目標や成果のことはよく知っています。しかし、上司の目標や成果のことは意外と知りません。

上司はその上司から何を期待されているのでしょうか?その期待に応えるために、自分は上司に対して何ができるでしょうか?上司の強みや弱みは何でしょうか?上司の価値観、仕事の進め方の特徴は何でしょうか?上司の強みを活かし、上司の価値観やスタイルに沿って、上司が成果を上げられるようにするために、自分は何をすべきでしょうか?

ドラッカーは、部下をマネジメントすることに加えて、「上司をマネジメントする」ことの重要性を説きました。上司が成果を上げ、上司が昇進しなければ、自分も昇進できないからです。

<④朋友(ほうゆう)と交わるに言いて信あらば>
③が企業におけるタテの関係を指すならば、④はヨコの関係を指しています。つまり、同僚や他部門とのつながりを指しています。コミュニケーションには必ず明確な言葉を伴う必要があります。阿吽の呼吸で動くことができることは、美徳ではありません。

私は自分の成果を上げるために、同僚や他部門に対して何をしてほしいと思っているのでしょうか?それをはっきりと伝え、同僚や他部門の仕事に組み込んでもらうことが大切です。

逆に、同僚や他部門はそれぞれの成果を上げるために、私に何をしてほしいと思っているでしょうか?まずは私が考えるところをはっきりと伝えなければなりません。ひょっとしたら、同僚や他部門は本当のところ私に対して違うことを期待している可能性もあります。期待されていないことを期待されていると信じて行うことは、単なる思い上がりです。

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【書き下し文】
子の曰(のたまわ)く、巧言令色(こうげんれいしょく)、鮮(すく)なし仁。
(学而第一 第三章)

【現代語訳】
先生がいわれた、「ことば上手の顔よしでは、ほとんど無いものだよ、仁の徳は。」

「仁」とは、孔子がその教えの根本に据えた考え方で、一言で言えば「他人を思いやる気持ち」のことです。孔子が生きた中国の春秋・戦国時代は、周王朝が衰退して諸侯が天下を争っていた乱世でした。

当時の世の中の乱れは、他人を思いやる愛情が失われていったことが原因であり、真心や思いやりを大切にして人を愛する心を取り戻すことが何よりも大切だと孔子は説きました。

仁の心は、「巧言令色」、すなわち巧みな言葉を並べ立てたり、外面(そとづら)をよくしたりすることでは到底得られません。

多くの企業は経営理念を掲げています。経営理念は、企業が目指す方向性、企業が実現したい理想像を表すので、基本的にはよいことが書かれています。

ただ、それが当たり障りのない美辞麗句になってはいないでしょうか?企業名を挿げ替えても通用するような抽象度の高いものになってはいないでしょうか?

僕は、よい経営理念とは、創業者や経営陣の「原体験」から導かれると考えます。原体験とは、自らの性格や価値観、その後の人生に強烈な影響を与える出来事のことです。原体験は個人に固有のものであり、その固有性に根差した経営理念には得も言われぬ迫力があります。

原体験から経営理念を導くタイプには、以下の4つがあります。

《①共有》
自分の成功を他者と共有するタイプです。例えば、自分がいくつかの事業会社を渡り歩いてマーケティングで高い成果を上げたことをきっかけに、そのエッセンスを世の中に広めるためにマーケティング支援会社を設立する場合が該当します。

《②教訓》
自分の失敗と同じ目に他者を遭わせたくないという想いが出発点となるタイプです。例えば、出産後に首尾よく仕事に復帰できなかった経験を持つ女性が、子育てをしながらでも長く働ける企業や社会作りに取り組む場合が該当します。

《③憧れ》
他人の成功に憧れ、それを別の人にも広めようとするタイプです。ハワード・シュルツ氏は、イタリアのカフェ文化に遭遇した際、それをアメリカに持ち込めば、アメリカで失われつつあるコミュニティの場を復活させられるに違いないと確信してスターバックスを創業しました。

《④共感》
他人の失敗に心を痛め、これ以上同じ目に遭う人を増やしたくないという想いからスタートするタイプです。商店街が衰退し、大手スーパーも撤退してしまった地方都市において、買い物難民となり日々の生活に苦労している高齢者のために、移動販売事業を始めるケースが該当します。

創業者や経営陣の原体験に基づく経営理念には、どこか「ごつごつとした手触り感」があります。血の通った、生きたエネルギーを持っています。

《④共感》で挙げた移動販売事業で最近急成長している企業の1つとして、徳島県の「株式会社とくし丸」が挙げられるでしょう。とくし丸の経営理念は、「おばあちゃんのコンシェルジュを目指す」というものです。この言葉遣いに、どこか人間の息遣いや温かみを感じませんか?

仮に、「お客様目線に立ち、お客様満足度を最大化します」といった経営理念だとしたら、何の面白みもないでしょう(案外、こういう経営理念を掲げている企業は多いものです)。

原体験に根差した経営理念は、事業における重要な意思決定を下すのに役立ちます。とくし丸の例で言えば、

「経営理念を実現するためにターゲットとすべき『おばあちゃん』とは具体的に誰なのか?何歳から何歳ぐらいの人で、どの地域に住み、どんなライフスタイルを送り、どんな価値観を持った人なのか?」、「逆に、ターゲットとすべきでない『おばあちゃん』とは誰なのか?」

「ターゲットである『おばあちゃん』にとって、『コンシェルジュ』となるために我が社が提供すべき製品・サービスは何か?その製品・サービスは他社から調達すれば十分か?それとも自社で製造するべきか?」、「逆に、『コンシェルジュ』となるのにふさわしくない製品・サービスは何か?」

といった問いを経営陣に投げかけ、議論することができるようになります。

「お客様目線に立ち、お客様満足度を最大化します」のような経営理念の場合、「経営理念を実現するためにターゲットとすべき『お客様』とは何か?」、「そのお客様の『満足度を最大化』するために提供すべき製品・サービスは何か?」という問いは、あまりにも一般的すぎます。

世界中の潜在顧客と世界中の製品・サービスの中から絞り込むという、途方に暮れるような分析作業を行わなければなりません。取捨選択の尺度がありませんから、たいていは最も儲かりそうな事業に次から次へと飛びつくという、自社都合で基軸のない経営になりがちです。

これでは、本当の意味で顧客のためになる経営とはなりません。顧客に対する思いやりのある経営、つまり仁のある経営にはなりません。

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