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「当時は無知のあまり、『なんとかしてやめさせなくちゃ!』という意気込みが空回りして、彼女から薬を奪い取ることだけに執着していた。


それがすべて逆効果になるとは露ほども知らずに・・・。


そう、このようにわたしたち父娘こそが母の薬物依存にとって、紛れもなく完璧なイネイブラー(※問題行動を陰で助長する身近な人)だったのだ」(p124)


医師のおおたわ史絵先生が、薬物依存症の母と過ごした壮絶な半生を綴った1冊です。その経験に対して僕が何か感想を述べることは、僕の能力を超えています。


ですから、今回の投稿では、僕自身のことを放言します。


僕は、両親との関係が断絶しています。特に、母との関係が壊滅的です。


(こんな僕が、親孝行の重要性を説く『論語』の勉強会をやっているのですから、いい冗談でしょう?)


僕は元々、弁護士志望でした。


僕が子どもの頃、母は、同居している自分の母、つまり僕から見た祖母との関係が最悪でした。家には毎日のように喧嘩の声が響き渡っていました。


ある時僕は、本棚から1冊の分厚いノートを見つけ出しました。


200ページぐらいあろうかというそのノートには、祖母に対する母の恨みが延々と書かれていました。


僕は子どもながらに、「これだけ祖母にいじめられている母を、法的に救う方法はないものか?」と考えました。


今振り返れば非常に短絡的だったのですが、何はともあれ、これこそ僕が弁護士を目指した理由でした。


ただ、大学時代にあっけなく挫折。経営コンサルタントの道を選びました。


僕が37歳の時、自分の事業の失敗などが重なり、十数年ぶりに実家に戻ったことがあります。


実は、大学生になって実家を出て以降、母と僕の関係もかなり悪化していました。


とはいえ、この時ばかりは実家に世話になる身として、多少は実家のために役に立ちたいという気持ちもありました。


しかし、母のヒステリーは手がつけられないほどに悪化しており、耐えかねた僕は短期間のうちに実家を飛び出してしまいました。


実家を、特に母を助けたいという僕の思いは、跡形もなく消え去りました。


神経症的な母にとっての僕が、おおたわ先生の言うところのイネイブラーに該当するとは思いません。


ただ、「自分が母を何とかしなければ」と必要以上に気負うことがマイナスである点は共通している気がします。


僕は小さい頃からよく、「責任感が強い」と言われてきました。


一般的には、責任感は強みになるでしょう。しかし、僕の場合は、弱みになってしまうようです。


というのも、「他人の問題に首を突っ込みすぎて、結局自爆する」からです。


思えば、大学時代にアルバイトをしていた塾では、大学受験生の集団授業を担当していた正社員が突然辞めてしまい、後釜としてクラス責任者となったものの、塾とのトラブル続きで、生徒の受験を最後まで見届けることができませんでした。


前職のベンチャー企業では、深刻な業績不振を自分の力で克服するのだと努力したものの、精神疾患を悪化させて退職を余儀なくされました。


フリーランスとして独立した後、とあるベンチャー企業と一緒に新規事業立ち上げの仕事をした時は、成否を握っているのは自分だというぐらいにリソースを投入したものの、事業が大コケして、僕自身も一回は廃業を経験しました。


御幣を恐れずに言えば、僕は人助けにはあまり向かない人間です。


僕の経営コンサルティングの仕事の中には、「経営理念の策定」も含まれています。


経営理念とは、「我が社は究極的に誰のどんなことを助けたくて存在するのか?」と理由づけをするものです。


そして、往々にしてその経営理念には、「経営者固有の強烈な原体験」が反映されます。


「昔、こういうことで困っている人を見て、心が震える思いがした」という「共感」や、「あの時こんな人がいたのに、十分な支援ができなかった」という「後悔」が原体験となります。


そういう原体験に突き動かされて、世のため人のために仕事ができる企業や人は本当に素晴らしいと思います。


一方で、僕はと言うと、「原体験らしい原体験がありません」。


弁護士を目指すきっかけとなった原体験は崩壊していますし、原体験を持ったところで、強すぎる責任感が弊害になり、原体験がプラスに作用しない恐れがあります。


原体験がないのですから、僕の人生には「誰かのために」という視点がありません(それでよくコンサルタントが務まるなぁと言われそうですが・・・)。


ただ、原体験がなくても、何とかこの社会でやっていく術がどこかにあるような気もします。


敢えて原体験を持たないことで、「何のために生きているのか?」という悩みや、「もっと自分らしく貢献したい」と個性を追いかける青い鳥症候群から人生が解放されることもあるのではないでしょうか?


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