
7つのポイントまとめ(最後はウクライナ侵攻を意識)。
①製造業の生産性は飛躍的に向上しているが、経済全体に占めるインパクトは減少している。
これは、かつての農業がたどった道である。農業が保護政策に走ったのと同様、製造業も保護主義に走る。多額の金を必要とする。
しかし、本当に重要なのは、勃興する知識産業への雇用の移行を後押しすることである。一時解雇された高年者を助け、若年者を再教育し再雇用するために金を使うべきである。
社会レベルでは学校教育を充実させ、企業・組織レベルでは知識労働者の生産性を上げることこそ真の課題である。
②第1次産業革命は、1785年にジェームズ・ワットの蒸気機関が産業用として初めて綿紡績に用いられたところから始まったとされる。
だが実際には、その後40年あまりの間に社会面、制度面の様々なイノベーションが起きたことの意味の方が大きい。
そして、1829年に鉄道が登場したことで産業革命は真の革命となった。
IT革命の場合、産業革命における蒸気機関に相当するものが1940年代に登場したコンピュータである。とはいえ、IT革命にとって真に重要なのはコンピュータではない。
IT革命が産業革命と同じ道をたどるならば、IT革命の真のインパクトはこれからである。鉄道に相当するものは何か?社会面、制度面でいかなるイノベーションを必要とするか?
③近代企業は以下の5つを前提としてきた。
ⅰ)企業が主人、社員が従者。企業が生産手段=資本の所有者。
ⅱ)社員のほとんどはフルタイムで働く。
ⅲ)「コースの取引コスト理論」に従い、自前主義を採った方がマネジメントしやすい。
ⅳ)市場では供給側が主導権を握る。
ⅴ)あらゆる産業がそれぞれに特有の技術を持つ。その技術は他の産業では通用しない。
一方で、1970年頃から全てが変わった。
ⅰ)知識が主たる生産手段=資本に。知識労働者と企業は対等なパートナーに。
ⅱ)多くが正社員ではなく、パートタイム、臨時社員、契約社員、顧問として働くように。たとえフルタイムでも、働いている企業の社員ではなく、アウトソーシング先の社員に。
ⅲ)取引コストの低下に伴い、統合ではなく分散の方が有効。
ⅳ)市場では顧客の方が情報を持っている。
ⅴ)いかなる産業、企業にも独自の技術はない。産業として必要とする知識は、馴染みのない異質の技術から生まれるように。
④③のⅰ)~ⅲ)の変化を受けて、まず企業は知識労働者をパートナーとして扱わなければならない。
金銭欲に訴えてやる気を起こさせることは不可能である。彼らの価値観を満足させ、社会的な地位を与え、社会的な力を与えることによって活躍してもらわなければならない。
同様に、社外の多元的な組織と連携するマネジメントを学習しなければならない。社外の組織に命令することはできない。パートナーシップを結ばなければならない。
パートナーと働くということは、マーケティングを行うことである。
「先方の価値観はどのようなものか?目標としているものは何か?期待しているものは何か?」を聞き続けなければならない。
⑤コンピュータリテラシーは言わずもがな、情報リテラシーが必須となる。
「どのような情報が必要か?どのような形で必要か?いつ必要か?誰から得るか?そして自分はどのような情報を出さなければならないか?」に答えられなければならない。
企業には会計システムとコンピュータシステムがある。しかし、いずれも古臭い代物である。
情報を連携しなければならない。情報を企業の成果と結びつけなければならない。とりわけ、社内の情報よりも社外の情報をカバーしなければならない。
社外の情報の中で最も重要なのは、「ノンカスタマー」の情報である。予期せぬ成功や予期せぬ失敗をもたらし、企業経営に深刻な影響を与えるのはいつでもノンカスタマーである。
⑥高度な知識を必要とする企業社会は、高度な競争社会になる。誰もが勝利する可能性を持つが、誰もが勝てるとは限らない。敗者を救済するセーフティーネットが必要である。
知識労働者にとって、非競争的なコミュニティの重要度が増す。社会的な課題を解決する場に参画しなければならない。その最たる候補となるのがNPO(非営利組織)である。
NPOは市場の審判を受けないからこそ、マネジメントが不可欠となる。大事なのは、使命と活動を定義し、継続的に評価していくことである。
⑦20世紀最初の戦争であるボーア戦争によって、従来の戦争のルールが変えられた。
戦略上の目標が、敵の戦闘能力、軍事力の破壊から、敵の潜在的戦闘能力の破壊、すなわち敵の経済の破壊と定義し直された。
しかし、敵国の経済を破壊するならば、戦争には勝利するかもしれないが、平和に勝利する可能性は損なわれる。
これこそ20世紀の2つの戦後、つまり1918-20年と、1945-50年という2つの時代から我々が学ぶべき重要な教訓である。
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