20220318_115649_0000

僕が月1回主宰している「論語を経営に活かす会」第8回が終了しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。


『論語』は中国の聖人・孔子の言葉をまとめたもので、儒教の教えを示す重要な1冊です。その論語20篇について、毎月1篇を題材に勉強を進めています。


毎回の勉強会では、1篇を構成する文章の中から僕がランダムに5つを選択し、内容に関連した「問い」を発します。


勉強会の参加メンバーは、その問いに答えることを通じて、論語の内容を現在の企業経営に活かすためのヒントを探っていきます。


今回の題材は「泰伯第八」でした。メンバーが特に盛り上がったのがこの文章でした。


「曾子(そうし)曰く、
士(し)は以(もっ)て弘毅(こうき)ならざるべからず。⁡
任(にん)重くして道遠し。
仁(じん)以て己(おの)が任と為す。
亦(ま)た重からずや。
死して後已(や)む。
亦た遠からずや」
(泰伯第八 第七章)


《現代語訳》
曾先生がいわれた。「道を行なおうとする者は大器で強敵な意志の持主でなければならない。任務が重大でしかも前途遼遠だからだ。⁡
⁡⁡
⁡仁をもって自分の任務とする、なんと重いではないか。死にいたるまでその任務はつづく、なんと遠いではないか」


儒教は「仁」(一言で言えば、思いやりの精神)を重視します。⁡
⁡⁡
⁡その仁の道を追求することは、死ぬまで続く思い任務であり、強靭な意思がなければ成し遂げられない、という意味です。


実は、徳川家康はこの文章に影響を受けて、「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず」という有名な遺訓を遺したと言われています。


僕はまず、「皆さんが人生を賭して実現したいと思っていることはありますか?その使命と、その使命を抱くようになったきっかけを教えてください」と問いました。


メンバーは、自分が日頃抱いている使命を紹介してくれました。


その上で、敢えて「そもそも、人生を生きる上で、使命は本当に必要だと思いますか?」と問うてみました。


メンバーからは、「使命は自分を奮い立たせてくれる」、「人生の羅針盤となるから必要」といった答えが返ってきました。


僕がわざわざこんな意地悪な問いかけをしたのは、「僕自身は使命を掲げることに向いていない」と思うからです。


使命とは、「社会(社会とまでは行かなくとも、自分が属するコミュニティ)をこう変えたい」という理想です。


企業であればそれが「経営理念」、個人であればそれが「キャリアビジョン」という形で具体的にイメージされます。


その理想に、企業や個人の価値観を反映させることで、企業は独自の優位性を、個人は自分らしさを表現します。


理想を掲げ、その実現のために必要なアクションをバックキャスティングで設計し、アクションを着実に実行できる企業や人は素晴らしいと思います。


僕も昔は相当な理想主義者でした。コンサルタントとして、「企業経営はかくあるべきだ」というものを強く信じていました。


しかし、理想を強く追求すればするほど、思い通りにならない現実とのはざまで苦しむようになりました。


そして、理想が一向に実現しないと、その理想を追いかけている自分には価値がないのではないかと、自分の存在意義を疑うようにもなってしまいました。


周りに対して理想を照射するまなざしは、自分自身に対しても向けられます。「僕の人生はかくあるべきだ」という理想を設定します。


ところが、その通りに行かず思い悩み、自分らしさを世の中に配置する場所がないような気がして精神をむしばむ、ということを繰り返してきました。


そこで、僕が30代も終わりに近づいた頃に選択したのは、「そもそも理想を持たない」という立場でした。「自分らしさ」を放棄することでした。


今の僕は、周囲にも自分にも大した期待をしていません。「なるようにしかならない」と構えています。


そして、自分にはさしたる価値もないとも思っています。


誰かのために独自の価値を発揮できる、他とは替えがきかない存在だとは考えていません。むしろ、容易に取り換えられる部品のような存在だと認識しています。


このようにスタンスを変えたら、僕の人生はずっと楽になりました。仕事や生活が面白くなりました。精神的負担が大幅に軽減されました。


僕が今大切にしているのは、理想という正しさの武器を振り回して、見ず知らずの他者までをも付き従わせることではありません。


たまたま僕と一緒になった人たちと、ちょっとでも心地よくなるために、できることをすることです。どうせ思い通りにならないことを面白がることです。


理想主義的な生き方がある一方で、僕のような生き方があってもいいのではないでしょうか?


#本の紹介
#ビジネス書
#読書
#読書記録
#本が好き
#本好きな人と繋がりたい
#読書倶楽部
#本スタグラム
#読書男子
#本のある生活
#おすすめ本
#やとろじー
#経営
#ビジネス
#経営コンサルタント
#経営コンサルティング
#コンサルタント
#コンサルティング
#中小企業診断士
#診断士
#論語を経営に活かす会
#論語
#孔子
#儒教