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著者の1人であるマンフレッド・ケッツ・ド・ブリースは、経営コンサルタントであると同時に心理学にも精通しているため、本書で言うコーチングは臨床心理学的なアプローチをふんだんに取り入れています。


一番勉強になったのは、コーチングを通じてクライアントの望ましくない言動を改善しようとする場合、その行動の原因を単線的に分析してはならず、言動に影響を与える複合的な要因を考慮し、システム論的に発想しなければならない、ということです。


「あるCEOの無謀にも見える行動を調査して対応しようとするなら、その行動を、脳細胞、脳、個体、個人の心理、経営チーム、企業、社会の各レベルでとらえることが考えられる。


たとえば、個々の脳細胞の神経伝達物質の生成不全、脳細胞間のシグナルの制御処理障害、躁うつ病の躁病相、両親との関係による情緒的影響の結果、チームメンバーとの相互作用のパターンの一局面、あるいは特定の人物やチームや企業文化との相互関係など、そのCEOの行動をさまざまなレベルで理解することができる」(上巻p112)


さすがに脳や精神障害のレベルまで考えようとすると、コーチは脳科学者や精神科医のように振る舞わなければならず、コーチの力量を大きく超えてしまうでしょう。


僕は、クライアントの言動に影響を与える要因を、3枚目の図のように大きく4つに整理することができるのではないか?と考えました。


すなわち、「生い立ち」・「これまでの職業経験」という【過去の影響】と、「プライベートの力学」・「所属組織での力学」という【集団の影響】です。


例えば、あるCEOが他の経営幹部からの提案に対し、何かといちゃもんをつけなければ気が済まないタイプで、そのために組織の意思決定が遅れているとします。


短絡的なコーチは、CEOのコミュニケーションスキルに問題があると判断し、「相手を不快にさせずにこちらの提案を受け入れてもらうための説得術」なるものを教授するかもしれません。


しかし、本書で言うところの「開発的なコーチ」は、このCEOの行動をもっと複合的にとらえます。


もしかしたら、幼少期に反体制的な運動にかかわっていた父親を見て育ったことが影響しているのかもしれません(生い立ち)。


もしかしたら、このCEOは長年、社内の反対を押し切って様々な改革を成功させてきたことでその地位に上り詰めた人物であり、闘争心が染みついているのかもしれません(これまでの職業経験)。


もしかしたら、このCEOは家庭では妻に非常に従順、いやむしろ妻から抑圧されて言いたいことも言えず、その反動で職場では好戦的になっているのかもしれません(プライベートの力学)。


もしかしたら、このCEOはNo.2にその地位を脅かされていると感じており、自分のパワーを誇示するために敢えて高圧的な態度を取っているのかもしれません(所属組織での力学)。


システム論的なアプローチでは、これらのいずれかに決定的な原因があるとは考えません。どれもが互いに影響し合い、そしてCEOの言動にも影響を及ぼしていると考えます。


開発的なコーチはその複雑な関係を読み解き、悪影響が徐々に改善していくように、システムを構成するあらゆる要素に少しずつ働きかけていきます。


その際、構成要素そのものを交換しようとはしません。生い立ちは変えられませんし、No.2が怖いからと言ってNo.2を排除することもできません。あくまでも、変えていくのは要素に対する”見方”です。


…とはいえ、これはちょっとやそっとではできないコーチングだなぁ。最近、自分がコーチングのような仕事もやっていると調子に乗って投稿していたことを恥ずかしく思いました。


「コーチングの基本分野である性格学と心理学の分野の訓練も受けず、その経験もないような、コーチとも言えないコーチは、善よりも悪を与える可能性がある」(上巻p44)


「訓練を積んでいないので1つのレベルしか扱えず、しかもそのレベルで1つの方法しか使えないコーチは、ハンマー1本で釘を打ち、ネジを締め、ペンキまで塗ろうとするようなものだ」(上巻p113)


…はい、反省します。


「社内コーチであれ社外コーチであれ、コーチを目指す人は皆、スーパーバイザーを探すべきだ(中略)。


この世のあらゆる知恵を独占しているコーチなどいない。経験豊富なスーパーバイザーは


コーチに必要な絶対条件であり、コーチの仕事を映しだすもう1つの鏡である。コーチングを受けようという人は、コーチがスーパーバイザーについているかどうかを確認したほうがよい」(下巻p49-50)


僕もスーパーバイザーを探そう。ちょうど僕の友人に、有名なコーチング団体から資格認定を受けてコーチとして活躍している人がいるので、相談してみようかな?


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