アメリカと中国の対立が激しくなっています。台湾をめぐって武力衝突する可能性も浮上してきました。
2つの超大国に挟まれた小国・日本は、どのような立ち位置を取ればよいのでしょうか?
1つには、「一方の大国にべったりくっつく」という手があります。今の現実に照らして言えば、日米同盟を強化することです。
しかし、それは在日米軍の強化を意味します。短期的には日本の安全が保障されるでしょうが、長期的には本当に得策と言えるでしょうか?
在日米軍が強化されると、基地がある場所(とりわけ沖縄)の心理的負担が重くなります。
また、日本は米軍基地をゼロコストで維持しているわけではありませんから、在日米軍の強化は、財政的負担の増加をも意味します。
何よりも、在日米軍が強化されれば、中国は自国にとっての脅威が増したと感じ、軍事力を増強します。
それがさらなる在日米軍の強化につながり、日本の負担増につながります。
いわゆる「安全保障のジレンマ」と呼ばれる現象です。
この悪循環を断ち切る策として考えられるのが、「戦略的曖昧さ」というスタンスです。
どちらの国の味方にもならず、自国の立場を敢えて解りにくくするというものです。
本書では、韓国の「戦略的曖昧さ」について触れられています。
「文在寅政権は、『戦略的曖昧性』という戦略を取っています。(中略)
安保・経済・北朝鮮の3分野で、米中どちらにも笑顔を見せるということです。(中略)
<米中対立において純粋な同盟派(保守派・右派)は少数だ。
安保は米国、経済は中国に依存する構造で、ある程度、米中間のバランス外交が必要だという立場が多数を占めている>」(p162-163)
日本も韓国に倣うことを本書の著者は提案しています(p238-240)。
「戦略的曖昧さ」とは、「中立」とは別の概念です。
「中立」とは、対立する両大国から距離を取り、両国の間でいかなる事態が発生しても何もせず、孤立を貫くことです。
これに対して「戦略的曖昧さ」とは、もっと能動的な戦略を表します。
具体的には、ある時は一方を利し、ある時は一方を利すという、”一貫性のない”態度を取ります。
図式化するならば、「中国をひいきする」⇒「怒ったアメリカに償う」⇒「今度はアメリカのひいきをする」⇒「怒った中国に償う」⇒「今度は中国のひいきをする」⇒・・・というサイクルをぐるぐると回すのです。
現在の日本は、中国脅威論が高まるあまり、アメリカへの依存度をより一層高めようとしている風潮があります。
「戦略的曖昧さ」の戦略に従えば、ここはひとつ中国の利益になることを行い、たまにはアメリカを怒らせることも必要、ということになります。
すなわち、わざと「あまり信頼できない国家」であることを演出する、というわけです。
これによって、米中双方の中に、「日本を味方に引き入れるのも攻撃するのもためらわれる」という心理的状態を作り出します。
僕は昔運用していたブログの中で、「戦略的曖昧さ」のことを、「大国間の”二項対立”に挟まれた小国が取るべき"二項混合"の戦略」として説明したことがあります。
とはいえ、ある意味非常に高度なこの戦略を計算づくで実行できる能力が果たして日本にあるのか?という疑問を僕自身が拭い切れていないのも事実です。
それに、「戦略的曖昧さ」の運用を誤ったことにより、日本の中で親米派と親中派がくっきりと分かれてしまい、両者が激しく対立したら、最悪な事態を招きます。
というのも、小国が内部分裂すると、両大国がここぞとばかりに必ず内政干渉してくるからです。
そして、深刻な内戦へと発展します。小国は、両大国の代理戦争の場へと化します。
こうした例は、アフガニスタンやシリアなど、枚挙にいとまがありません。
さらに、「戦略的曖昧さ」を取ったとしても、結局は大国からの攻撃を避けられないのではないか?という根本的な問題もあります。
ウクライナは、歴史上ロシアと文化的な背景を共有しており、ソ連崩壊後のロシアとも経済的に深く結びついていました。
しかし、軍事的にはNATOに近づくという「戦略的曖昧さ」を見せました。
その結果、ロシアを怒らせてしまい、現在の軍事侵攻へとつながっています。
日本が米中の武力衝突に巻き込まれないようにするには、一体どうすればいいのでしょうかね?(結局、尻切れトンボ・・・)
#本の紹介
#ビジネス書
#読書
#読書記録
#本が好き
#本好きな人と繋がりたい
#読書倶楽部
#本スタグラム
#読書男子
#本のある生活
#おすすめ本
#やとろじー
#経営
#ビジネス
#経営コンサルタント
#経営コンサルティング
#コンサルタント
#コンサルティング
#中小企業診断士
#診断士
コメント