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ドラッカー名著集全15冊を2か月に1冊のペースで読破しようという隔月の勉強会「ドラッカー勉強会」の第2回を開催しました。


今回の題材は、『現代の経営(上)』でした。


ドラッカーはマネジメントを、「資源を生産的なものにすることを託された機関」と定義しています。


そして、マネジメントには、「事業をマネジメントする」、「経営管理者をマネジメントする」、「人と仕事をマネジメントする」という3つの次元があると整理しています。


僕なりにもう少し解りやすく説明すると、マネジメントとは「人をはじめとする資源を最大限に活用しながら、組織の成果を上げること」を意味します。


「事業をマネジメントする」とは、「そもそも組織の成果とは何か?」と問うことです。


「経営管理者をマネジメントする」とは、組織の成果創出に向けて資源を活用する者=経営管理者(マネジャー)の質を上げることです。


そして、「人と仕事をマネジメントする」とは、現場に投入される資源の質を上げ、その資源を最大限に活用する方法を確立することです。


メンバーとは、「とりわけ中堅・中小企業の経営者がマネジメントを強化するにはどうすればよいか?」というテーマでディスカッションを行いました。


まず、「やはりトレーニングが重要だ」という点でメンバーは合意しました。


問題はそのトレーニングのやり方です。


中小企業診断士のメンバーからは、


「公的機関や様々な経営コンサルタント、中小企業診断士などがバラバラに研修・セミナーをやっている」


「往々にして自らの成功体験を語るにとどまっている」


「あるべきマネジメントについて議論しても、『色々な意見がありますね』という講師の総評で終わってしまい、消化不良感が残る」


といった課題が提起されました。


これに対して、中堅・中小企業のバイアウトを通じて事業再生や事業承継を行っているメンバーからは、


「世界中で長年にわたりマネジメントが実践された結果蓄積された『一般解』、『原理原則』を適切に学べる機会を作らなければならない」


という指摘がありました。


実際、このメンバーが所属する企業で中堅・中小企業を買収すると、経営者を対象とした体系的なトレーニングを必ず実施すると言います。


経営学には、「こう考えると事業が上手くいく確率が高まる」と言われる考え方がいくつもあります。


例えば、新規事業開発であれば「アンゾフの成長ベクトル」、マーケティングであれば「STP理論」、人的資源管理であれば「外発的/内発的動機づけ理論」などを挙げることができます。


これらの一般解、原理原則、理論に触れる機会を世の経営者に広く開放する必要があります。


そして、意見が異なるのは、単に人によって感じ方が違うというだけでなく、依拠している原理原則の差によることに気づかせることも大切です。


日本には約360万の企業があります。つまり、約360万人もの社長がいます。単純計算で、人口の約40人に1人は社長です。


また、マネジメントの担い手は社長だけに限られないことを踏まえると、マネジメントを学習すべき人は多数に上ります。


僕は、「『大人の義務教育』としてマネジメントを学習できる制度を作ってもよいのではないか?」とさえ考えています。


ただ、マネジメントを体系的に学習できる機会を整備できたとしても、さらに2つの問題が生じます。


1つ目は、「いかに学習の動機づけを行うか?」です。中堅・中小企業の経営者・マネジャーに、いかにマネジメントの必要性を自覚してもらえばよいでしょうか?


誰かが「御社のマネジメントではまだまだ不十分です」と言うだけでは足りません。何をもって「不十分」と言っているのか、根拠が曖昧です。


個人的には、「上げるべき利益を上げていない」ことをはっきりさせることがカギではないか?と思います。


ドラッカーは利益について、「事業の目的ではなく結果にすぎないが、事業の妥当性を測る基準である。企業には、最低限上げなければならない利益がある」といった主張をしています。


現実的な話をすると、企業は利益の中から法人税を支払い、配当を行い、借入金を返済しなければなりません。さらに、(今回のコロナのような)不測の事態に備えて貯蓄をしたり、将来の投資に向けて原資を作ったりする必要もあります。


つまり、事業の特質や構造からして、その企業が上げるべき利益の額はある程度客観的に計算できます。


その額と現実の利益額を比較してギャップがあれば、「マネジメントが足りていない」と主張することができます。


中小機構などは、財務諸表の数字を打ち込むと簡単な財務分析を行ってくれるシステムを公開しています。


もちろんこれも大切ではあるものの、加えて自社の妥当な利益額を試算できる仕組みがあると、マネジメント学習の動機づけになるでしょう。


もう1つは、「いかにトレーニングと実務の橋渡しをするか?」という問題です。せっかく研修でよいことを学んでも、現場で活かされなければ何の意味もありません。


これは、マネジメント研修に限らず、研修全般に言える問題でもあります。


大企業が自社の社員を何十人も集めて社内で研修を行うのであれば、研修と現場の距離感の問題はある程度緩和されます。


しかし、中堅・中小企業の経営者・マネジャーを対象に研修を行う場合、わざわざその1社のために研修を実施することは困難です。


現実的には、外部の公開研修・セミナーに参加してもらうという形になります。すると、どうしても研修と現場の距離が遠くなってしまいます。


研修で学んだ原理原則を、自社のマネジメントに「埋め込み」、原理原則を実践しなければ自社の経営が回らない、という形を作ることが理想です。


さらに理想を言えば、研修終了後に我々のような中小企業診断士が参加企業1社1社に寄り添って、そうした埋め込みを行うべきなのでしょう。


とはいえ、それではあまりにも手間がかかりすぎて、マネジメント学習の効果を広く波及させることができません。


ITを使って学習効果をモニタリングできる仕組みがあるとよいのでしょうが、どういう仕組みにすればよいか僕にはまだアイデアがありません。


経営者・マネジャーのITリテラシーを考慮しなければならないとなると、さらにどうすればよいか皆目見当がつきません。もっと皆様のアイデアを聞いてみたいところです。


最後にもう1つだけ、別の角度から僕の問題意識を書きます。


「マネジメントには『一般解』、『原理原則』がある」という話をしてきました。しかし、そこまで高度な一般解、原理原則が必要なのか?と最近の僕は感じています。


やや語弊があることを承知で言えば、現在確立されている一般解、原理原則は、「経営偏差値65~70」ぐらいを目指しているような気がします。


つまり、必要最小限の利益を超えて高収益を上げる、もっと素朴な言い方をすると「偉大な企業になる」のが目的となっています。


ところが、世の多くの中小企業は、そこまでの高みに到達しようとは思っていない、というのが僕の実感です。


必要最低限の利益は確保しなければならないものの、「それなりに儲かればよい」というのが大半の中小企業にとってのゴールです。経営偏差値で言えば、55ぐらいのレベルです。


僕は、そのレベル感に合わせたマネジメント学習の仕組みも大切なのではないか?と考えます。


これは、「偏差値65~70」ぐらいのマネジメント学習の中身をただ単に解りやすくシンプルにすればよい、という話ではありません。


新しいロジックに基づく新しいマネジメント観が必要だと思うのです。それを僕は「新しい日本的経営」と呼んだりしています。


その中身をもっともっと膨らませていきたいですね。⁡
⁡⁡

⁡低収益にあえぎ、やりたくない仕事に忙殺されてる中小企業に、「もっと楽しくマネジメントすれば、案外儲かるんだ」と言ってもらいたいですね。


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