
ドラッカーは代表作『マネジメント』の中で、次のように述べています。
「トップマネジメントの仕事とは、1人の仕事ではなく、チームによる仕事である。トップマネジメントの役割が要求するさまざまな体質を、1人で併せもつことはほとんど不可能である。しかも、1人ではこなしきれない量がある」
一般的に、経営と言うと社長1人の仕事だと思われがちです。中小企業であればなおさらです。しかし、経営の仕事は非常に高度かつ多岐にわたっており、社長1人で遂行することは非常に困難です。だから、たとえ中小企業であっても、経営はチームで行わなければなりません。
ドラッカーは『現代の経営』の中で、こんな事例を紹介しています。
企業の経営のよしあしを判断する目安を探せー。これはある銀行が融資の調査部門に出した課題です。経営のよしあしは何を見れば解るのでしょうか?財務諸表に表れるのでしょうか?
銀行の調査部は、何百社もの企業を調べた結果、ある事実を発見しました。経営チームがチームとして機能している企業は、経営者も士気が高く業績もよい反面、経営チームがチームとして機能していない企業は問題が多かったのです。
調査結果を受けて、この銀行は「経営チームがチームの総意で動いているかどうか?」を基準に融資を実行するようになりました。すると、銀行の業績が伸びていったそうです。
本書は、主に上場企業の経営チームを支援している著者が、経営チームの作り方を解説した1冊です。
経営チームにはどんな人を入れればよいか?どのように役割分担すればよいか?メンバー同士の意見の対立を建設的に活用して経営チームの成果につなげるにはどうすればよいか?といったことが書かれています。
ただ、経営チームを形成する前に、今回の投稿では「そもそも経営者の仕事とは何か?」ということを改めて整理したいと思います。経営者の仕事が明確でなければ、それを複数人で分担してチームを組むこともできません。
人によって様々な整理がありますが、僕は経営の仕事とは以下の5つだと考えます。
【Ⅰ.構想する】
①経営の「原点」となる経営理念(存在意義と行動規範)を定める。「我が社は誰に対してどんな価値を提供するために存在するのか?」、「その価値を実現するために、いかにして自らを律するのか?」といった問いに答える。
【Ⅱ.実行する】
②原点に従う:経営理念と密接に結びついている既存事業を遂行する。今日・明日の数字を作る。
③原点を拡充する:企業にとって②のみによる現状維持とは死であり、常に挑戦を続けなければならない。そこで、経営理念の解釈を拡張しながら、既存事業とシナジーのある新規事業を立ち上げる。明後日の機会をものにする。
④原点を再構築する:環境変化は残酷であり、どんなに②や③で成功しても、その前提をひっくり返すような変化が起きることがある。その変化を先取りするべく、過去の成功体験を自己否定し、新しい経営理念を打ち立て、イノベーションを起こす。将来の成長エンジンを創造する。
【Ⅲ.継承する】
⑤経営の原点を次の経営チームのメンバーに継承する。次世代の経営チームメンバーを育成する。
②③④はこの順番で難易度が上がります。③④については別の機会に譲るとして、今回はまず②について詳しく見てみたいと思います。
②-1.市場を理解する:顧客を理解するだけでなく、ドラッカーが言うところの「非顧客」、すなわち、まだ顧客になっていない人、顧客になることを想定していなかった人についても理解を深める。同時に、顧客や非顧客のニーズを満たしている競合他社のことを理解する。
②-2.戦う武器を作る:よい製品・サービスを作ることに加えて、その製品・サービスをいかにして販売するか、プロモーションや営業についても武器を揃える。製品・サービスそのものでの差別化が難しくなっている今日では、売り方で差別化することが重要となる。
②-3.オペレーションを組み立てる:製品・サービスを作り、それを販売・提供する業務プロセスを確立する。それぞれの部門が個別最適に走るのではなく、顧客に対して価値を提供するために会社全体としてどのようなプロセスにしなければならないのか?という視点を持つ。
②-4.経営資源を最適化する:オペレーションが機能するように、必要な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、技術・ノウハウ)を投入する。労使トラブル対応、外注先管理、資金繰り、システムや技術の不具合対応といった「昨日の問題」の解決のためではなく、「今日・明日の機会」のために貴重な経営資源を使う。
②-5.事業の成果を評価する:売上高や利益といった最終成果だけでなく、成果に至るプロセスもバランスよくモニタリングする。正しい方法で成果を上げたかを検証する。経営理念にある行動規範に則った形で得られた成果かどうかを評価する。
中小企業において経営チームを作るには、まずは既存事業が成功するように、上記②-1~②-5の機能を複数人で分担するところから始めるのがよいのではないでしょうか?
#本の紹介
#ビジネス書
#読書
#読書記録
#本が好き
#本好きな人と繋がりたい
#読書倶楽部
#本スタグラム
#読書男子
#本のある生活
#おすすめ本
#やとろじー
コメント