
①「徳」というのは多くの人々と交わるなかで初めて養われるものであり、そのためにはいつも自分が多くの人々に向かって開かれていることが必要となってくる(p60)。
②(占いに対して)共感的な立場からは、共時性(シンクロニシティ)という概念などが持ち出され、物体や出来事が時間的・空間的に相互に関連しているという考え方が支配的となる。すべてが結びついているという発想には十分検討すべきところがある(p84)。
③いったい未来を見えなくしているのはなんだろうか。実は、ぼくには、人間を人間たらしめている当のもの、「自己」とか「理性」とか「主体」とか呼ばれているものこそが、最大の阻害要因ではないかと思えてならない(p93)。
④ただひたすらこの世の出来事を「原因→結果」の網の目でとらえようとするのではうまくいかないことはわかっている。それより、さまざまな事象系列が出合うことによって変化が引き起こされる「場」からスタートして考えなければならないであろう(p138)。
⑤いまや、みんな自分の身を守ることに汲々としているし、理屈に合わない事件も多発している。そんな時代には自分を解きほぐしてくれるもの、眠り、赤ちゃんに戻してくれるもの、恍惚、柔軟性、ぐちゃぐちゃにしてくれるもの、そんなものにこそ大きな価値があるのではなかろうか(p193-194)。
⑥また別の生き方も考えられるのではないか。徹底的に自分本位で生きて、それでいて決して他人に迷惑をかけず、すべてマイペースでいくというのがそれである。しかも、ひとつの集団のなかでトップを目指すのではなく、いくつもの集団をわたり歩いて(たとえば、つり仲間とかテニスサークルとか)、複数の自分を実現する(p197)。
⑦好ましい生き方とは「普通(つつがなく)」を幸運の陣営に入れ込んであげることではなかろうか。それに対して、「普通(つつがなく)」を不運の側に入れてしまう人がいる(「自分には何もいいことがない」)(p211)。
本書は確率論を中心としているものの、あちこちに脱線するため全体像が非常につかみづらかったのですが、ところどころ重要な文章があったので引用してみました。
僕が「偶然」に注目するのは、以前から僕が取り上げている「新しい日本的経営」(別名、「水曜どうでしょう」的経営)のカギを握っていると考えるからです。
組織の明確な目的やミッションの下、市場の中から魅力的な事業機会を発見し、強みを活かして差別化しながら計画的に価値提供するのが「伝統的経営」だとするならば、「新しい日本的経営」とは、はっきりとした経営理念や突出した強みがなくとも、環境との偶発的な相互作用を通じて、予想外の市場を出現させるものです。
僕が最近、運や偶然について学んだのは、以下の3点です。
A.悪い出来事は自分だけに起きるのではなく、多くの人に起きている。
B.一見すると悪い出来事でも、解釈次第でよい出来事にできる。
C.世界の出来事は我々が思っている以上につながっているし、つながり得る。出来事に対するポジティブな解釈を重ねていくことで、幸運な世界を紡ぎ出すことは可能である。
僕は生来ネガティブな性格で、不運が自分ばかりに起きると考えてしまいます。
例えば、自転車で移動中に雨に降られると「日頃の行いが悪いせいだ」と思うし、自分が行きたいお店を(Googleマップで下調べをせずに)訪れると定休日や臨時休業のことが多い、といった具合です。
しかし、僕の妻は「雨が降った時、他にも雨に打たれた人がいたでしょ?」、「行ったお店がたまたま休みだったなんてよくあることでしょ?」とあっけらかんと言ってのけます。
妻はマイナスの出来事をプラスに解釈する達人です。僕は慢性的な腰痛を抱えていて、椅子に連続で1時間以上座り続けることが困難です。こまめに姿勢を変えたり、腰痛を緩和する体操を挟んだりしないと、集中力を持続できません。
これに関しても、「あなたは過集中した後に深刻なエネルギー切れを起こす傾向があるから、1時間ごとに休憩を入れるよう、身体に安全装置が埋め込まれているのよ」と、ポジティブな解釈を提示してくれます。
妻の行動を見ていると、日常の出来事がプラスに連鎖するよう、小さな変化を積極的に取り入れています。
例えば、僕が定期的に病院に通院するのに妻が付き添ってくれるのですが、毎回同じルートで病院に行こうとする僕に対して、妻は乗るバスを変えてみたり、途中で寄り道をしたりします。すると、不思議なことに、思いがけず魅力的な店舗や商品を発見することがあるのです。
妻の観察を通じて解ったのは、世の中には「運がよい人/悪い人」がいるのではなく、「運をよくする人/悪くする人」がいる、ということです。「新しい日本的経営」についても、幸運を自ら能動的につかみに行くような経営というものを描写してみたいものです。
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