20230322_171047_0000

ベストセラーである齊藤徹(2021)『だから僕たちは、組織を変えていける―やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』(クロスメディア・パブリッシング)の続編で、同書の内容をより深く理解し、実践するためのワークブックとなっています。

ベースにあるのはクリス・アージリスやピーター・センゲらの「学習する組織」の考え方です。本家の「学習する組織」は民主的なイノベーションを目指しており、組織や社会の全構成員を巻き込んで、全員で一気に古いシステムを刷新しようとします。

しかし、本書は「半径5mから始める」というフレーズがたびたび用いられていることからも解るように、身近なところからリーダーシップを発揮していこう、という内容になっています。この点で、日本的な組織開発の本と言えるかもしれません。

組織を変えるにはリーダーシップが必要です。アメリカではその役割を1人ないしは少数の限られたリーダーに期待する傾向があります。その最たる例が、ジョン・コッターの「変革型リーダーシップ」です。

コッターは、組織(特に大企業)を変革するには、以下の8ステップを踏む必要があると述べています。

①危機意識を高める
②変革推進のための連帯チームを築く
③ビジョンと戦略を生み出す
④変革のためのビジョンを周知徹底する
⑤従業員の自発を促す
⑥短期的成果を実現する
⑦成果を生かして、さらなる変革を推進する
⑧新しい方法を企業文化に定着させる

端的に言えば、社内の危機感をあおり、1人ないしは少数のリーダーが新しいビジョンを掲げ、それを短期的に組織に浸透させ、成果を上げるというものです。

確かに、変革型リーダーシップは大きな成果をもたらすことが多いです。しかし、一種の”劇薬”であり、問題もはらんでいます。具体的には、

・社内に必要以上の緊張感が走る。
リーダーは自分の価値観や能力をビジョンに反映させることができる反面、社員は示されたビジョンに従うしか選択肢がない。多様性が尊重されない。
・短期的な成果を目指すあまり、なぜそのビジョンが重要なのか?社員1人1人はビジョンの中にどう位置づけられるのか?などといった深い対話が置き去りにされる。

などの問題点が挙げられます。

成果を中心に据えたハードなリーダーシップはアメリカでも受けが悪くなっているようで、人間関係を中心に据えた、「学習する組織」のようなソフトなリーダーシップが近年では好まれているように見受けられます。

組織は一朝一夕で変わるものではありません。組織変革に長い時間がかかるのであれば、ずっと緊張したまま、苦しみながら取り組むよりも、楽しみながら臨みたいものです。

僕は、「楽しい組織」には3つの条件があると考えます。まず、顧客への「貢献実感」があることです。人は、誰かの役に立っていると確かに感じられる時、モチベーションが上がります。

とはいえ、誰かに指示された通りにやって顧客の役に立ったとしても、あまり面白くはないでしょう。「自分らしさ」を発揮しながら、自分なりのやり方で顧客に貢献できれば、面白さが増します。

しかも、それを1人でやるよりも、チームでやる方がずっと楽しいはずです。仲間を支えているという意識、仲間に支えられているという意識、つまり「協働意識」が3つ目の条件です。

貢献実感、自分らしさ、協働意識ーこの3つの条件を満たし、楽しく組織開発を行う7つのステップを僕なりに考えてみました。

【①相互理解を深める】
組織開発に必要なのは深い対話です。深い対話を行うには、メンバーが自分を開示し、お互いをよく理解していることが出発点となります。私とあなたの価値観は何か?私とあなたの能力は何か?をオープンに共有します。仕事のことしか知らない人とよりも、プライベートのこともよく知っている人との方が、本音で話しやすくなります。

【②組織の前提を疑う】
組織開発は、社員が今の仕事を進めづらいと感じている時に行うものです。どんな点が仕事の足枷となっているかを棚卸しします。今のターゲット顧客でよいのか?今の製品ラインナップでよいのか?今の販売方法でよいのか?今の業務や会議でよいのか?今のメンバー育成法でよいのか?といった観点から、組織の様々な慣習やルールを点検していきます。

【③顧客への貢献に焦点を合わせる】
ピーター・ドラッカーは、「組織の成果は組織の外部にしかない」、そして「事業の目的は顧客の創造である」と言いました。企業は顧客に貢献するために存在します。上司や社内の他の部署を喜ばせるために存在するのではありません。社内の利害関係を越えて、「我々はどんな顧客にいかなる価値を提供すべきなのか?」を明確にします。

【④ムダを思い切って省く】
ただでさえ日常業務に追われて忙しい社員が何か新しいことを始めるには、何かを捨てなければなりません。ドラッカーは「体系的廃棄」という考えも示しました。「もし今日新たに組織を立ち上げるとして、何から始めるべきか?何をすべきでないか?」と問い、不要な業務を捨てます。ちょっと捨てるのでは足りません。バッサリと捨てる必要があります。

【⑤自分らしさを発揮する】
繰り返しになりますが、たとえ顧客に貢献できたとしても、誰かに指示された通りにやったのでは社員の満足度は上がりません。社員が自分の価値観や能力を活かし、自分なりにコントロールされた方法で顧客貢献することが満足度につながります。

自分の価値観や能力を的確に認識するには、①で述べた相互理解が役に立ちます。他者からのフィードバックは、自分を深く理解するのを助けてくれます。

【⑥チームとして互いに助け合う】
チームメンバーは自分の目標達成を助けてくれる道具ではありません。私とメンバーは対等です。だから、まずはメンバーを助けることが重要です。メンバーの顧客貢献を実現するために、私にできることは何か?と問います。私の顧客貢献を実現するために、メンバーに期待することは何か?と問うのはその次です。

【⑦組織に波及効果をもたらす】
チームの力を活かして、メンバーが自分らしさを発揮しながら顧客貢献できるようになったら、その効果を周囲にも広げていきます。この取り組みに次に巻き込むべき人は誰か?と問います。そして、新しいメンバーを取り込んだら、再び①に戻って相互理解を深めていきます。

#本の紹介
#ビジネス書
#読書
#読書記録
#本が好き
#本好きな人と繋がりたい
#読書倶楽部
#本スタグラム
#読書男子
#本のある生活
#おすすめ本
#やとろじー
#経営
#ビジネス
#経営コンサルタント
#経営コンサルティング
#コンサルタント
#コンサルティング
#中小企業診断士
#診断士