
『論語』は、中国の春秋時代の思想家である孔子とその高弟の言行を、孔子の死後に弟子が記録した書物です。儒教の経典であり、朱子学における「四書」の1つに数えられています(残りは『孟子』、『大学』、『中庸』)。
その内容の簡潔さから儒教入門書として広く普及し、中国の歴史を通じて最もよく読まれた本の1つとなっています。
『論語』は人間社会における「仁」や「徳」の大切さを説いたものですが、僕のInstagramでは、『論語』の中から企業経営に活かすことのできる教えを抽出する、という試みをやってみたいと思います。
日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一は、役人の世界から実業界に身を転じる時、「『論語』で事業を経営してみせる」と言ったとされます。実際、渋沢は『論語』から経営のエッセンスを大いに学んでいました。
その一部は、竹内均編(2004)『渋沢栄一「論語の読み方」』(三笠書房)で知ることができます。
とりわけ特徴的なのが、「富」に関する考え方です。ややもすれば、『論語』は富を否定し、清貧に生きることをよしとしていると解釈されることがあります。ところが、渋沢は「孔子は真っ当な方法で稼いだ富のことを肯定していた」と主張します。
「子曰く、富と貴(たっと)きとは、これ人の欲(ほっ)する所なり。その道を以てこれを得ざれば、処(お)らざるなり。貧しきと賤(いや)しきとは、これ人の悪む所なり。その道を以てこれを得ざれば、去らざるなり。〔里仁〕
富と地位とは万人の欲するところである。しかし、これを得るためにはそれ相当の方法がある。つまり学を修め功を立て、身をつつしみ徳をそなえることだ。富貴そのものはもとより悪いものではなく、青年の目的としてよいが、これを獲得する手段方法については、慎重な態度が必要であるというのが、孔子の趣意であろうかと思われる。
ところが従来の学者の説では、往々にして本項の『人』を悪人の意味に解釈して、富と地位は悪人の要求するものであって、これを獲得するには不正な方法をもってする必要があるから、君子はこれに近づいてはいけない。富と地位とが外より舞い込んできても、これを避けるべきであるかのように説いたりする。
これはまったくいわれなき偏見である。孔子の趣意は正道でなく、無法をあえてして獲得した富貴が悪いというだけのことである」(p89-90)
向こう1年ぐらいかけて、『論語』の中かから僕のお気に入りの文章を紹介し、それを企業経営にどう活かすことができるのかを解説していきます。
なお、僕は以前から、経営には「伝統的経営」、「アメリカ型イノベーション」、「新しい日本的経営」という3つのタイプがあると考えています。
◆伝統的経営◆
創業者や経営者の原体験に基づく経営理念の実現に向けて、顕在化している、あるいは顕在化しつつある顧客ニーズを充足するための戦略を論理的に構想し、実行する経営。
◆アメリカ型イノベーション◆
従来の顧客の消費行動や業界の慣習を否定し、イノベーターの強みを活かして、グローバル規模で新しい標準・規範・ルールを打ち立てることを通じ、これまでにない市場や産業を創造する経営。
◆新しい日本的経営◆
明確な経営理念や強みがない場合に、限られた資源、とりわけ人とのつながりに着目し、相互理解を積み重ねながら、偶発的な出来事を直観的に活用して、予想外の展開を楽しむ経営。
端的に言えば、「伝統的経営」とは、既知のニーズを充足するマーケティング、「アメリカ型イノベーション」とは、未知のニーズを創造するイノベーションのことです。どちらもまずははっきりとした事業の目的を設定し、それを実現する手段を論理的に導き出すことを特徴としており、偉大な企業になるには避けて通れない道となっています。
しかし、世の中の全ての企業が偉大な企業になれるわけではなく、また偉大な企業を目指しているわけでもありません。
はっきりとした事業の目的はなくとも、手持ちの手段をよい意味で場当たり的に活用しながら、それなりの成果を上げている企業もたくさんあります。僕は、経営の第三の道として、「新しい日本的経営」というものを用意しようと目論んでいます。
3つの経営タイプは、どれがよい、どれが悪いというものではありません。3つは相補関係にあり、豊かな産業社会を形作るにはいずれも重要なピースです。
とはいえ、今回『論語』を通じて僕が語りたいのは、主に「伝統的経営」の話です。というのも、「伝統的経営」が3タイプの中で最もベーシックなものだからです。
以上を踏まえた上で、『論語』の解説記事をお楽しみください。なお、各投稿で紹介する書き下し文や現代語訳は、金谷治訳注(1999)『論語』(岩波書店)からの引用です。
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