
《印象に残った部分》
◆打線を見てよ。3割バッターがいないのだ。これだけでも極めて珍しい現象やと思うけど、それでも得点数はリーグNO.1よ。その要因は「つながり」やと考える。とにかく塁に出る。どんな形であっても出塁数を増やす。オレはこれを選手に求めた。それには四球が重要と説いた。(p13)
◆監督でもコーチでも、オレの基本は「見る」ことでスタートする。例えばキャンプ。練習に入る前、全体でのアップから始まる。体をほぐし、ランニングして準備に入るわけだが、選手一人ひとりの動きを、コーチはしっかりと見ておかねばならない。それもしないで、リラックスして談笑しているコーチがいたら、オレは見逃さない。(p63)
◆(中野を見ている中で)オレには引っ掛かるところがあった。それが守備での肩の問題。テレビでショートから一塁への送球が乱れるシーンがあった。ハハーン、これは肩に自信がないのかとオレなりにピンときた。(中略)より中野の器用さを生かせる方法はないか?そこでセカンドへのコンバートに踏み切った。(p59)
◆木浪に関しては、それほどの期待感はなかった。しかし2022年の秋、2023年の春。オレは木浪の潜在能力を「見る」ことで発見したのよ。
実にシャープに動くし、肩が思っていた以上に強いことが分かった。これで決めた。中野の抜けたショートを小幡と木浪で競り合わせる。これで1年は戦える。そういう結論に至り、開幕を迎えたのだ。(p64)
◆2023年シーズン、オレは監督にカムバックしてから、近本に感じていたことを伝えた。評論家時代、ネット裏から見ていて、あまりに早打ちが目立ったから、もっと待ってから勝負してもいいんやないか、と勧めた。
そのあと見ていると、ホンマに打席に落ち着き払った近本の姿があった。簡単に追い込まれても、慌てない。動じることなくボールを見極め、いつの間にか近本ペースになっている。これこそが一番打者の理想的なスタイル。確実に「近本スタイル」を築いたのよね。(p165)
◆現代野球は間違いなくブルペンがカギを握るのだ。先発投手がバンバン完封、完投となれば別だが、そういう野球はいまは通じない。投手の選手生命を考え、球数制限が生まれ、登板間隔も十分に空ける。年々、完投数が減る球界にとって、ほかのチームとの差別化を図るのは、そらブルペンになるわね。ここが強ければ、絶対に勝負になる。(p99)
◆そもそもペナントレースは長い。143試合で優勝を争うわけだが、そのためには、どんな心持ちが必要なのか。そこでオレはずっと「いかに普通に戦えるか」を訴えてきた。だが、それは簡単なことではない。普通に戦う難しさ。それが分かるだけに、選手には無理難題を押しつけているか、結構、考えもしたよね。(p103)
◆ファンにはよく聞かれる。「鳥谷は来年、コーチになるんですか?」「(藤川)球児はどうですか?」。今岡の次に名前が出るビッグ2。そら人事のことやし、本人たちの事情もある。ただね、願うのは今岡を含め、彼らのような若い世代のOBがタイガースのユニフォームを着て、指導者に、というのがベストな形なんやろうと思う。(p121)
◆球界はこれからFA補強など、動きが活発になると思うが、阪神はFA戦線にはまったく興味がない。それよりも自チームから、新しい力を育てていくことに注力する。若いチームのその下に、さらなる若さのある候補者が構えている。そんな何層にも連なる戦力を築き上げること。これこそが、長い黄金期を続けるための最善手と、オレは確信している。(p174)
《感想》
2023年の阪神の優勝は不思議なものでした。岡田監督も「3割バッターがいない」と書いているように、非常に突出した選手が少ない、キャリアハイの成績を残した選手がほとんどいないにもかかわらず、優勝を成し遂げたのです。
岡田監督は、興味深い価値観の持ち主です。
岡田監督はかつて、侍ジャパンの監督要請を断ったことがあると明かしています。代表監督に求められるのは、勝つために必要な戦力は何かを考え、その戦力を揃えることです。しかし、岡田監督は「自分は『現有戦力で何ができるか?』を考えるタイプだから、代表監督には向かない」と言ったそうです。
手持ちのカードで何とかする―これはまさに「エフェクチュエーション」であり、僕が言うところの「新しい日本的経営」に通じるものがあります(一方、勝利という目的に向かって、その実現手段を論理的に導出するのは「コーゼーション」であり、「伝統的経営」の発想です)。
「伝統的経営」は、偉大な企業を目指し、圧倒的な成果を出すための非常に厳しい手法です。これに対して僕は、伝統的経営ほどではなくても、そこそこの成果を楽しく上げられるような経営として、「新しい日本的経営」を構想していました。
しかし、2023年の阪神の優勝は、ひょっとしたらエフェクチュエーション=新しい日本的経営でも目覚ましい成果を実現できる可能性があると、僕にとっては大きな希望になりました。
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