経済安全保障リスク(ブログ用)

《要点》
◆中国において経済成長は、国民を豊かにするためにあるものではない。すべては戦争準備つまり世界制覇のための作戦であり、軍備増強を目的としている(p41)。

◆『超限戦』は、あらゆるものを戦争の手段とし、あらゆる場所を戦場とすべきだと主張する。(中略)グローバル化と技術の総合を特徴とする。一見、戦争とは何の関係もない行動が、最後には「非軍事の戦争行動」となるのである。

貿易、金融、ハイテク、環境の分野などは、従来なら軍事範囲とは考えられなかった。しかし、これらは利用次第で多大な経済的・社会的損失を国家や地域に与えることができる。『超限戦』は、人類に幸福をもたらすものは人類に災難をもたらすことができる、と考えるのだ(p43)。

◆「国防動員法」とは、有事であると中国が認定すれば、外国資本の工場や物資を自由に接収し、かつ知的財産権を自由に使用することができる法律である。発動されれば、中国にある日本企業の工場は接収される。これは明らかに事業リスクである(p50-51)。

◆こうした法律(※「国家情報法」のこと)があるにもかかわらず、情報活動への協力義務を負う中国人を軍事技術や軍民両用技術の開発業務に当たらせている日本企業がいまだにある(中略)。管理が手薄な中で軍民両用技術が中国に移転されれば、外為法違反や特定秘密保護法違反の対象となる可能性が高い(p53)。

◆従来の制空権、制海権に加えて、制智権が重要になるという考え方である。中国はこれを「智能化戦争(intelligent warfare)」と呼び、この戦争に勝つために西側諸国から機微技術及び軍民両用技術の移転に努めている(p56)。

◆実はここに騙される日本企業が多い。中国独特の産業構造を知らないから、取引先が民生専門企業だと思い込んで取引を行ってしまう。その結果、この子会社を通じて親会社へ軍民両用技術が筒抜けになり、知らない間に中国の軍民融合戦略に取り込まれ、結果的に中国の軍備拡張に手を貸してしまうことになるのである(p72)。

◆まずは、日本の大学に留学した国防七校からの留学生が、日本の大学で何を研究していたのかを徹底調査し、軍民両用技術を研究していなかったかを調査することから始めるべきだ(p94)。

トヨタが中国でリチウムイオンバッテリーの研究開発を進めることは、ドローンや通常動力潜水艦はじめリチウムイオンバッテリーを搭載する中国の兵器群の性能向上のために軍事転用される可能性が高い。これはおそらく、前述した1987年の「東芝機械ココム違反事件」以上のインパクトをアメリカに与えるだろう(p128)。

◆中国は「中国製造2025」に則り、リチウムイオン電池技術を軍事利用するために、NEC由来の電極技術を手に入れたいと考えた。そこで目をつけたのが日産自動車である。日産自動車からAESCとNECエナジーデバイスをセットで買収することで、NEC由来の電極技術を手に入れ、軍民融合政策で軍事転用することができる。そこでゴーンに話を持ち掛け、ゴーンがそれに乗り、一部の腹心だけで話を進め、他の役員には事後報告で済ませたのではないかと想像する(p136)。

◆中国のこの輸出管理法は、言ってしまえばアメリカ側陣営と中国側陣営との世界の分断を図るものだ。世界の各国に対して、中国の敵となるのか味方となるのか踏み絵を踏ませるような法律である。中国の輸出管理法の成立によって、アメリカと中国は、投資と輸出を舞台にした全面戦争に入ったと言うことができるだろう(p150)。

◆A社がハイクビジョン(※中国の防犯カメラメーカー。ウイグル族出身人物を識別する技術を中国政府に提供しているとされる)に監視カメラの生産を委託しているとしよう。(中略)

A社ブランドの監視カメラを各企業が導入して使用したとする。(※アメリカのECRA〔輸出管理改革法〕によれば、)その場合、A社ブランドの監視カメラを使っている企業は、その企業が商品化するすべての製品をアメリカ政府に売ることができなくなる(p178-179)。

◆(※中国は)「信頼できないエンティティリスト」「輸出禁止・輸出制限技術リスト」への掲載可能性や「輸出管理法」の再輸出、みなし輸出などを取引材料として、中国の政治的立場への同調を求めてもこれに応じない企業や、中国への事業依存度が高い企業を政治的報復のターゲットにすることが想定される(p207)。

◆2021年は経済安全保障という概念が叫ばれ、実際の政策となって運用されていくだろう。経済安全保障のために、最も重要な食糧、そして機械類など必要不可欠とされる製品の国内生産が重視され、経済に対する政府の関与の度合いは大きくなることが予想される(p232)。

《感想》
「私は2年以上前から『日本企業が米中両方へ八方美人のつきあいをすることは不可能になる』と警鐘を鳴らしていた」(p208)とあるように、経済安全保障の観点から脱中国を勧める1冊となっています。

ただ、個人的には、単純な「親米反中」で果たして日本は生き残れるのか?と疑問に感じています。地政学的に、日本は米中という2大国に挟まれる運命にあります。言い換えれば、アメリカと中国は日本という恋人をめぐって三角関係にあります。この場合、日本には3つの戦略が考えられます。

1つ目は、どちらか一方の大国につくことです。日米同盟を重視する現在の日本はこのスタンスが強く、本書もそれを推奨しています。ところが、日本がアメリカ依存を高めて日米間で機密を共有すればするほど、中国はそれを激しく奪おうとするでしょう。かえって米中の対立を高める結果になりかねません。

仮に、日本がアメリカを捨てて、中国側についたらどうなるでしょうか?おそらく、アメリカは日本に軍事侵攻するに違いありません。ウクライナというかつての恋人を西側諸国に奪われたロシアと同じ行動原理が働きます。

2つ目は、両方の大国を捨てて、独立独歩の道を歩むことです。経済安全保障の観点から言えば、日本が必要とする財は全て自給自足することになります。しかし、資源に乏しく、技術の国際競争力も低下しつつある現在の日本にとって、これは現実的ではありません。

例えば、今の日本政府が躍起になっている半導体産業の強化1つを取っても、最先端の半導体を100%国産にするのは夢のまた夢です。台湾のTSMCを日本に誘致しなければならない時点で、日本の限界が見えています。

3つ目は、米中という大国と三角関係をずるずると続けることです。人間関係においては倫理観に抵触しますが、日本が生き残るということを考えるならば、実はこれが最もリアリティのあるストーリーではないかと感じます。日本は米中の双方に対して、信頼醸成と裏切りを繰り返すという、老獪な戦術を繰り出すのです。

残念ながら、対立する2つの大国の双方を小国が手玉に取るための理論を我々はまだ手にしていません。理論の構築とその実践が急務です。

ところで、なぜ僕がこんな政治的な話まで論じているのかと言うと、日本が取るべき政治的スタンスと、僕が常々口にしている「新しい日本的経営」には共通項があるからです。僕は、「伝統的経営」、「アメリカ型イノベーション」では語れない経営として、「新しい日本的経営」を持ち出しました。

「アメリカ型イノベーション」は「伝統的経営」の企業を破壊しようとするわけですが、両者の対立のはざまにあって、とりわけ中小企業・小規模事業者が何とか生き残る処方箋を「新しい日本的経営」に託したいと考えています。

「新しい日本的経営」が「伝統的経営」と「アメリカ型イノベーション」の双方を上手く利用する姿が、米中に挟まれて現実的に生存の道を模索する日本と重なるのです。

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