
《要点》
◆【観光】昨今の地方観光は、顧客である大都市の方を向いて、「顧客が何をほしがっているか?」ばかりを意識している。地方都市は大都市が思うほどキラキラしていない。観光客には、地方都市で普通の生活を味わい、普通の人と交わってもらうだけでも十分に満足していただける。観光客が「一時的市民」となるような視点が大切である。
◆【居場所】地方のコミュニティ形成に向けた「居場所」作りが盛んである。だが、居場所において何かを「やる」ことが目的と化すと、目的から外れる人、具体的には目的の実現に必要なスキルややる気がない人を排除しかねない。大事なのは、「いる」だけで十分という空間を取り戻すことである。そして、「いる」と「やる」を行き来する。
◆【政治】かつては東京という強者に地方という弱者が依存し、東京からの経済的恩恵に地方があずかるという垂直統合的な社会モデルであった。しかし、今や東京も弱さを抱えている。ならば、お互いに弱さを通じて連携し、人々がそれでもなお幸せに生きていくための支援やサポートに投資し、あわよくばわずかな成長を狙うという水平連携の社会モデルが現実的となるだろう。
◆【メディア】ローカルメディアに携わるようになってから、取材の目的や企画をあまり意識しなくなった。地元の人々とゼロ距離で関わり、ただそこにいるという「半取材」が中心となった。地元の人々の話は想像を超えてくるし、その偶然を自分たちが楽しみ面白がる。すると、不思議なことに地方の課題や魅力がより鮮明に浮かび上がってくる。
◆【アート】アートは専門家だけのものではない。暮らしや日常の中から題材を発掘し、そこにこれまでとは別の角度から光を当てれば、目の前の現実を一度引っぺがしたり、対話を促したり、100年、1000年を超える視座を提供したりしてくれる。アートは作品というよりも「事象」、「出来事」であり、関わる人々の間にコミュニティを作ってくれる。
◆【スポーツ】地方のスポーツと車社会が結びつくと、地域を「面」でとらえる新たな視点が生まれる。サッカーを見るついでに温泉、観戦ついでに道の駅に寄り道、など。さらに、地方のスポーツが社会課題の解決を目指せば、我々は単なる観戦者ではなく当事者となる。スポーツが選手だけのものから「わたしたちのもの」になる。
◆【食】地方の食ビジネス活性化と言うと、生産者の顔が見える食材に付加価値をつけて販売するという戦略が思い浮かぶが、それだけではない。大都市で見られる効率重視の低価格ビジネスと、地方にありがちな高級路線の”間”にあって、地域の経済に根差し、旬を通じて地域の魅力を伝えつつも、黙々と都市部に安価で供給される食材(例えば、著者が住んでいるいわき市の「板かまぼこ」)のような、「間のローカル」にも目を向けたい。
◆【子育て】子育てについて考える時、親は「子どもにとっての環境」ばかりを考え、自分が二の次になってしまう。もっと「わたし」の状態を考慮してもよい。地方が楽しそうだから、魅力がありそうだから、という理由で移住すればよい。移住のハードルが高ければ、まずは「定住未満、交流以上」の関係を目指してみる。地方で仕事を探すのは不安だという声もあるが、周辺の自治体にまで視野を広げれば案外見つかる。
◆【死】死や自然との距離が近い地方都市に住んでいると、「生/死」や「有/無」という二元論が揺らぐ。世の中は不確実性にあふれている。人間はそれをコントロールすることで社会を発展させてきたが、確実性と不確実性の間を往来し、時に「しょうがない(いわき弁で「しゃあんめ」)」と言ってサバイブしていきたい。
◆【書店】地方でサードプレイスとして機能する小規模書店は、「閉鎖性」と「開放性」の両方を兼ね備えている。入るのには勇気がいるものの、中には広い世界が広がっており、様々な人がそこにいて、立ち読みしたり店主とおしゃべりしたりする。閉鎖性は田舎の、開放性は大都市の特徴だとすれば、書店は地方で「都市」を起動する役割を果たしている。
《感想》
福島県いわき市で「ローカルアクティビスト」として活動する小松理虔氏の著書です。「こんな地方のまちづくりの物語を待っていた!」と思えるような1冊でした。
行政がイニシアティブを握って大規模なハコモノを作るか、予算のバラマキのような支援策を展開して終わりとするのではなく、その土地に住む人が自分の興味・関心を出発点として、少しずつ主体性を発揮しながらまちづくりを膨らませていく姿が本書には描かれていました。
「目的を過度に意識しない」、「今、ここにあるものを大切にする」、「まずは自分が楽しむ」、「人とのつながりから生まれる偶然を活かす」、「弱みをつなぎ合わせる」、「消費する側―消費される側という関係を攪拌する」など、僕が常々書いている「新しい日本的経営」(別称「水曜どうでしょう的経営」)とも共通項が多かったです。
「都会か地方か」という二分論で語るのではなく、都会も地方もどちらも大切だという著者のスタンスにも共感しました。「伝統的経営」を「都市型」、「新しい日本的経営」を「地方型」と呼ぶならば、僕自身も都市型、地方型は両方とも必要だと考えるからです。
僕は「新しい日本的経営」なるものが果たして実現可能なのか、自分でも半信半疑になる時があるのですが、著者のように既にそれを体現している人がいることを心強く思います。さあ、次は僕が自分のまち・土浦市で行動を起こす番だ!
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