
《印象に残った箇所》
◆まちづくりとは、主役である市民たちが一定規模のまとまった集団(私たち)となって、自分たちが暮らし関わるまちの将来を自ら考え、行動するムーブメントといえます。まちづくりが「民主主義の学校」と言われるゆえんは、ここにあります(p10)。
◆日本建築学会(2004)において佐藤滋(1949-)は、まちづくりの定義を「地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動」としています(p11)。
◆まちが抱える課題を解決するために、意欲をもって改善に取り組める能力を表す言葉に、「シティズンシップ(citizenship)」があります。「多様な価値観や文化で構成される社会において、個人が自己を守り、自己実現を図るとともに、よりよい社会の実現に寄与するという目的のために、社会の意思決定や運営の過程において、個人としての権利と義務を行使し、多様な関係者と積極的に関わろうとする資質」と定義されています(p26)。
◆みなさんがまちづくりに関わっていくうえで、「どのような関係者」がいて「どのような素材と空間」があるのか、まちの基盤も理解していきましょう。この本をロールプレイングゲーム(RPG)に例えるなら、主人公はあなたです。仲間を探してチームをつくり、必要なアイテムをゲットしてレベルアップしながら、まちづくりという冒険の旅を進めていってください(p31)。
◆<新しい公共(地域公共圏)>は(中略)人口減少やそれにともなう税収減などによって行政が抱えきれなくなった業務を、自治会やPTA、商店会といった地縁のコミュニティ、企業、NPOが担う積極的な動きを表す言葉です。単純に行政業務を分担するということではなく、地域の実情に応じた、よりきめ細やかなサービスを地域の総力で提供していく、という意味合いが強い概念です(p45)。
◆まずは、まち歩きからはじめてみましょう。それまで何気なく見過ごしていた風景も、意識的に眺めてみると、思わぬ面白さに気づくものです。歴史が残された建物や道、生活や文化と結びつく自然など、まちの新しい一面を発見できるのがまち歩きの醍醐味です。そして、まち歩きは、あなたの暮らすまちの魅力や問題を発見する効果的な手段でもあります(p74)。
◆アメリカの建築家・環境デザイナーであるクリストファー・アレグザンダー(1936-)は、1965年に発表した『都市はツリーではない』と題する論文において、伝統的な都市は<セミラティス構造>になっているが、近代都市計画によって形成される都市は単純な<ツリー構造>になっていると批判しました(p160)。
(※)セミラティス=各要素間で多様な結びつきを可能にする網目状の構造。 機能を重視する人工都市がもつ固定的ツリー構造に対して、人為的設計によらない自然都市にみられる多義的なネットワークによって機能する構造のこと。
◆近代以降の社会は、自己中心的な行為の合理性を重視する<目的合理性>に偏重しているとハーバマスは指摘し、これに対して<コミュニケーション的合理性>を提起します。コミュニケーションを通じて人々は共通理解を得ることができ、社会的な相互関係を構築できるという価値観に基づいており、より民主的で公共的な交流が可能になるとしています(p163)。
《感想》
僕は、従来の都市計画がまちづくりのビジョンや目的から出発し、それを達成する手段を合理的に設計する「コーゼーション」であったのに対し、今求められているまちづくりとは、手持ちの手段から出発し、他者との協働を通じて生まれる偶然を活用してムーブメントを大きくしていく「エフェクチュエーション」ではないかと考えています。
「地域社会に存在する資源を基礎として…」というまちづくりの定義や、「『どのような関係者』がいて『どのような素材と空間』があるのか、まちの基盤も理解していきましょう」という記述はいずれも、「手段の評価を出発点としなさい」というアドバイスに聞こえます。
先日、とある市で「地域ニュースサイト号外NET」のライターをやっている方とお会いする機会がありました。その方は、「戦略や計画などという大それたものはいらない。地元には既に優れた能力を持つ人がたくさんいる。そういう人たちを結びつけることで新しい価値が生まれるように仕掛けたい」とおっしゃっていました。これもまた、エフェクチュエーショナルな発想だと思います。
コーゼーションには、ビジョンや目的に合致しない人や要素を排除するという冷淡さがあります。また、効率重視でビジョンや目的を達成しようとするため、関係者は息苦しさを感じがちです。さらに、目的を達成した後の存続はどうするのか?という問題もはらんでいます。まちに必要なのは、誰一人取り残さない「包摂性」、無駄や非効率が生み出す「面白さ/豊かさ」、まちがいつまでも存在し続けるという「持続可能性」です。
この3つを実現するまちづくりのプロセスとは何か?僕は、コーゼーションでは一般的となっている「PDCAサイクル」に代わって、「STARサイクル」なるものを提案してみたいと思います。
○S(Situatite:状況を作る)
まずは地域の人々が集まれる状況を作る。カフェを始めるでもよいし、共通の趣味をテーマとしたイベントを開催するでもよい。ここでは低リスクで小さく始めることが肝要である。ビジョンや目的、戦略や事業計画は、例えば融資を受けるにあたって要求されることもあるが、そこまでがっちりと固めない。
○T(Tramp:放浪する)
地域の人々が集まってきたら、場の流れに身を任せる。カフェであれば、1杯のコーヒーを介して店主とお客様、あるいはお客様同士の間で生まれるコミュニケーションを大切にする。協働の中から偶然の産物を待つ。その産物は、最初に何となく掲げたビジョンや戦略から外れていればいるほど望ましい。
○A(Active Feedback:前向きにフィードバックする)
場に関与した人たちの間で相互理解を深める。その人はどんなことに興味があるのか?どんな考え方や価値観を持っているのか?どんなことが得意なのか?何をやりたいと思っているのか?誰を知っているのか?こういった問いに答えられるようにする。
○R(Relate:他者を結びつける)
新しいことをやりたがっている人と、それに関心がある人、それを実現する能力を持っている人、あるいはそれを実現する能力を持つ人を知っている人とを結びつけて、新しい状況を創り出す。こうして、STARサイクルのSに戻る。
よし、ここまで考えたのならば、あとは僕が住んでいる土浦市で実際にやってみよう!
エフェクチュエーションでは、「顧客のためになること」よりも「自分がやりたいこと」を優先して構わないと感じます。「シティズンシップ」の定義に「個人が自己を守り、自己実現を図るとともに、よりよい社会の実現に寄与するという目的のために…」とあり、「よりよい社会の実現に寄与するという目的」よりも「個人が自己を守り、自己実現を図る」ことの方が先行しているのは見過ごせない点です。
エフェクチュエーションでは、「顧客のためになること」よりも「自分がやりたいこと」を優先して構わないと感じます。「シティズンシップ」の定義に「個人が自己を守り、自己実現を図るとともに、よりよい社会の実現に寄与するという目的のために…」とあり、「よりよい社会の実現に寄与するという目的」よりも「個人が自己を守り、自己実現を図る」ことの方が先行しているのは見過ごせない点です。
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