問いの設定力(ブログ用)

《要点》
◆「Before AI」の時代には、①設定された課題に対して早く/正確に正解を導き、②正しい情報を意思決定者へ上げ、③組織の判断に沿って着実に成果を出すフォロワーシップが重要視された。組織内では、④集団の”らしさ”に沿って生きる力が求められた。

これに対して「After AI」の時代には、①自ら説くべき課題を設定する「問いの設定力」、②覚悟を持って決断する「決める力」、③周囲に影響力を発揮しながら決めたことをやり切る「リーダーシップ」が大切となる。それらの土台となるのは、④「自分らしさ」に沿って生きる力である。

◆AIは、①選択肢がある問い、②過去・ある場所での判断を尋ねる問い、③一定の条件下での理想を明らかにするための問い、④論理的に答えられる問いは得意である反面、①’自分の意思に関わる問い、②’イマ・ココでの判断を尋ねる問い、③'ゼロベース思考で理想を明らかにするための問い、④'情理が関わる問いは苦手である。

◆問いを進化させる問いの基本は、①広げる(他に選択肢はあるか?)、②深める(なぜそう言えるのか?)、③反論する(どのような反論が考えられるか?)、④抽象化する(つまり、ここから何が言えるのか?)の4つである。

◆曖昧な問いに対しては、フレームワークなどを用いて問いを構造化することが有効である(前述の「深める」に相当)。例えば、上司から「プロジェクトの調子はどう?」と聞かれたら、Q(品質)C(コスト)D(納期)の観点から問いを3つに分解するとよい。

◆ゼロベース思考で物事を考えるには、ある意見が出た時に、「それによって何を実現したいのか?そのアイデアの目的は何か?」と、一段上の視座へ引き上げる質問が効果的である(前述の「抽象化する」に相当)。すると、目的を充足するための別のアイデアが出てくる可能性が高まる。

◆問題解決をするにあたっては、いきなり「どうすればよいか?」というHowの問いを立ててはならない。問題解決にはWhat(そもそも何が問題なのか?)⇒Where(どこが具体的な問題なのか?)⇒Why(なぜその問題が起きているのか?)⇒How(どうすれば問題を解決できるか?)という順番がある。

◆「決める力」を高めるには、多面的、長期的、根源的に物事を見た上で、頭で考え(知力)、心で感じて(共感力)、腹で決める(胆力)ことがカギとなる。

◆影響力(リーダーシップ)の源泉には様々あるが、AIが普及していくと、社会的証明や権威、希少性といった影響力の源泉は陳腐化していくと予想される。一方で、人対人の関係性により生じる要素(返報性・好意)や、リーダーとしての姿勢(コミットメントと一貫性)はより重要性が増してくると考えられる。

◆自分らしさを発見するには、過去・現在・未来の自分に向けた問いを発するとよい。①過去の自分を「ライフラインチャート」で見える化し、大切にしている価値観を明らかにする、②「キャリアアンカー」や「意味の階段」といったツールを用いて、現在の仕事の目的や自分の強みを発見する、③「社会課題」に触れることで、未来の自分の志を立てる。自分らしさが問いに深みを与えてくれる。

《感想》
マネジメントの父であるピーター・ドラッカーも、「大切なのは正しく答えることではなく、正しい問いを立てることである」と述べていたと記憶しています。問いが鋭ければ鋭いほど、我々のクリエイティビティは大いに刺激されます。

僕の知り合いのとある社長は、単に顧客がほしいと思うものをストレートに提示するような営業をしていません。顧客が自らの課題を多角的に見つめ、自身に対する理解を深め、新たな発見(インサイト)が得られるような営業を行っています。社長の提案書には、顧客に対する様々な問いが散りばめられています。顧客と一緒にそれらの問いに答えながら、顧客との信頼関係を深め、受注につなげているのだそうです。

「問いの設定力」が重要であるという本書の主張には全面的に賛成します。ただ、本書はグロービスで「学び放題」というサービスの事業リーダーを務めている方が書いたものであるせいか、内容が伝統的な問題解決の技法に偏りすぎている印象を受けました。クリエイティビティを発揮するための問いの立て方としては、何かが足りないような気がします。

しばしば、AIは過去のことは答えられるが、未来のことは答えられないと言われます。未来を問うのは<if(もし~ならば)>です。AIに負けないようにするためには、ifを使いこなす力が必要になると考えます。

加えて、<敢えて極端なケースを想定する>こともクリエイティビティの解放につながるでしょう。ちょっと昔の話で恐縮なのですが、2010年に中日ドラゴンズの落合博満監督(当時)が対ロッテとの日本シリーズを前にした監督会議で、こんな突飛な問いを投げかけました。

「もし、第1戦から第7戦まで7試合連続で引き分けて、その後第14戦までもつれ込んだらどうするのか?」

会議のメンバーは、そんなことなどあり得ないという表情を浮かべていたそうですが、当時のルールでは第7戦までは延長15回引き分け制で、第8戦以降が延長無制限(つまり、必ず勝敗が決する)でしたから、第8戦以降が3勝3敗なら第14戦に突入することは理論的にはあり得たのです。

第7戦の11月7日で決着がつかなければ、第8戦以降はナゴヤドームで試合を行うことになっていました。仮に第13戦までもつれ込んだとすると、試合日の11月13日は、既に組まれている日韓クラブチャンピオンシップと重なってしまうのでした。落合監督には、第8戦以降があり得ることを示すことで、それに対応できる選手枠25名の拡大、さらに延長無制限の検討を促す意図がありました。

落合監督の問いは、時間軸を極端にした問いと言えます。何を極端に設定するかは、5W2Hの観点が役立ちます。クリエイティビティを高める問いは、<if>+<5W2Hの視点>+<極端なケース>によってデザインできると言えそうです。

【①Who=人を極端にする】
・もし、エスキモーに冷蔵庫を売るならばどうすればよいか?
・もし、女性が天皇になったら日本社会にどのような影響があるか?

【②What=モノ・対象を極端にする】
・もし、空飛ぶ車が生まれたら空の交通はどうデザインすればよいか?
・もし、営業がこの世から消えたら顧客はどんなことで困るか?

【③When=時間を極端にする】
・もし、光源氏が現代に転生したらモテるのか?
・もし、1日の労働時間が4時間に制限されたらビジネスモデルをどう変えるべきか?

【④Where=場所を極端にする】
・もし、明日からアフリカでビジネスをせよと言われたらどんな事業をするか?
・もし、宇宙に倉庫を作れるなら世界の物流はどう変化するか?

【⑤Why=目的・動機を極端にする】
・もし、会社が社員のためにあるとしたらどんなマネジメントになるか?
・もし、容疑者が義憤に駆られて犯罪を犯したならば本当に悪いのは誰なのか?

【⑥How=手段を極端にする】
・もし、スマホが1か月使えないとしたらどんな暮らしをするか?
・もし、無人島に1つだけ持ち込むことができるとしたら何を持ち込むか?

【⑦How much=金額を極端にする】
・もし、今100万円が手に入ったら何をするか?
・もし、プロジェクトの予算が半分に削られたらどうするか?

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