
《要点》
◆セレブリックス社の調査によると、提案型商材の場合、新規営業で商談に至ったお客様のうち、受注するお客様の割合は18%であり、実に82%のお客様は「買わない」。買ったお客様のデータよりも、買わなかったお客様のデータの方が蓄積されやすい。「買わない理由」を分析し、営業プロセスの中で1つずつ排除していくことで、受注の確率は上がる。
◆新規営業の成果をコントロールするには、営業力よりも「探客力」を磨いた方がよい。すなわち、アタックリストのメンテナンスに時間を割いた方がよい。よいターゲットリストとは、①ニーズの高いお客様が「精度」高くピックアップされており、②一番よいタイミングで営業できる「鮮度」の高さがあり、③アタックすべきキーパーソンの情報や事業課題、連絡先などが「具体的」で、④売上目標を達成するための「絶対数」があることである。
◆アウトバウンド営業でアポイントを獲得するには、いきなりお客様にヒアリングしようとするのではなく、まずは事例やレポート、業界トレンド情報などを「GIVE」することで、お客様にとって営業が「役に立つ人」だと思われることがカギである。その上で、お客様の本音を聞き出して購買検討のタイミングを探り、リードを獲得する。
◆最強の営業は「コンサルティングセールス」である。コンサルティングセールスは、①アカウントプラン(攻略計画の策定)、②アプローチ(信頼の獲得)、③ファクトファインディング(課題の設定)、④オーダーコントロール(要件定義とネクスト設計)、⑤企画作成、⑥プレゼンテーション、⑦クロージングからなる。それぞれの工程でお客様から「合意」や「共感」を得ながら進めていく。①~⑦のうち、より重要なのは、①~④のリードセールスである。
◆【アカウントプラン】「(3C+2C)×マクロ環境」のフレームワークを用いて、商談の勝ち筋を見つける。3Cとは、Customer(顧客=ターゲット)、Customer's Customer(顧客の顧客)、Customer's Competitor(顧客の競合)である。まずは、顧客を取り巻く環境を分析することで、顧客の戦略的方向性を探る。その上で、2C=Company(自社)とCompetitor(競合他社)の観点から、顧客の戦略を実現するために、自社が競合他社と差別化しながら(あるいは時に協業しながら)価値提供できる道筋を立てる。
◆【アプローチ】アプローチの目的は、商談に期待を持って参加してもらう土台を築くことである。⓪よい第一印象を与えられるよう準備する、①挨拶/名刺交換、アイスブレイクを通じて壁を取り除く、②商談の目的を提示し、商談アジェンダを確認することで興味を持ってもらう、③会社紹介/サービス紹介によって信用してもらう、というステップを踏む。アプローチ段階では、お客様のコミュニケーションスタイルが「DiSC」の4タイプのうち、どれに該当するのかを見極める。
(*DiSCについては、https://www.mdsol.co.jp/column/column_122_1927.html などを参照)
◆【ファクトファインディング】ファクトファインディングでは、単にお客様が既に認識している問題をヒアリングするのではなく、お客様が気づいていないような課題を設定する。①まずはお客様の「ビジネスモデル」を理解し、②「現状」がどうなっているのかを把握する。③その上で、お客様にとっての「理想」を引き出し、④理想と現状の差として「問題」を抽出する。⑤問題の「原因」を分析し、⑥営業としての「示唆」を与えた後で、⑦お客様が解決すべき「課題」を特定する。
◆【オーダーコントロール】お客様の課題が設定できて初めて、提案内容の調整に入る。この工程では、①どのような提案なら受け入れられるのか?(要件定義)、②提案をどのような評価基準で、誰が評価するのか?(攻略情報の確認)、③具体的に提案を進める次のステップをどう設定するか?(ネクストアクションの設定)といった点を明らかにしていく。
《感想》
著者は、営業代行会社として有名なセレブリックス社で執行役員兼セールスエバンジェリストを務めている方です。
平たく言えばコンサルティング営業についての本であり、提案書作成やプレゼンテーションよりも前の工程が圧倒的に重要であると力説されています。さらには、コンサルティング営業に入る前に、そもそもコンサルティング営業が通用するお客様を適切にターゲティングしてアウトバウンド営業を行わなければならないとも書かれています。
僕も、顧客企業に対して法人営業力強化の支援を細々とやっている身であり、コンサルティング営業の手法で飯を食わせてもらっているようなものです。ただ、最近は「コンサルティング営業を超える営業スタイルはないものか?」と思うようにもなっています。
「しかし、絶対に勘違いしてはいけないことがあります。それは『お客様はあなたにコンサルティングされたいとは思っていない』ということです。一見矛盾しているようですが、要は『お客様にコンサルティングをしにきたと感じさせてはいけない』ということです。お客様が求めてもいないのに前のめりでコンサル色を過剰に出すと、『偉そうなヤツだ』と受け取られるだけです」(p135)
コンサルティング営業とは、「お客様の弱みに着目して、そのマイナスを埋める営業」なのですが、お客様は営業から「こういうことが御社ではできていない」とか「これが御社の問題・課題です」などと、わざわざネガティブな指摘を受けたいと思っているとは限りません。
マネジメントの父であるピーター・ドラッカーはよく、「弱みではなく、強みに着目せよ。強みを伸ばすことで、弱みをなかったことにせよ」と述べていました。お客様の強みを伸ばすことで、元々の弱みを気にしなくても済むような営業スタイルを確立することができたら素敵だろうと思います。
アパレルショップに行くと、優秀な販売担当者は、お客様のポジティブな身体的特徴や内面から醸し出される雰囲気を発見し、それをさらに際立たせるようなアイテムを上手にコーディネートしてくれます。お客様は、自分でも知らなかった自らの魅力に気づき、未来がぱっと明るくなったような気分になります。
これと同じことが法人営業でもできたら、大きなブレイクスルーになるでしょう。マイナスを埋める営業ではなく、「お客様の強み×自社のアイテムでお客様の未来を共創する」営業が、次世代の営業スタイルになるのではないでしょうか?こうした営業は、容易にはAIに淘汰されないものだと断言できます。
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