人が集まる場所をつくる(ブログ用)

《要点》
◆まちづくりというものは、その地域の歴史や風土、文化が息づいているべきである。その地域を見て、人の話を聞き、そこにしか存在しない魅力を掘り下げながら、まちづくりの方向性であるグラウンドデザインを創造していく。

◆駅ビルを中心とした「駅直結型商業施設」は、地域にネガティブな影響を与えている。スクラップ・アンド・ビルド型のまちづくりは、シンプルで解りやすい。それは一見、効率的な施策である。ただし、歴史や文化も同時に失われていく。簡単なまちづくりは簡単な結果しかもたらさない。

アイルランドでは、街並みを残すことに時間やお金を投資することが主体的に選択されている。それは、「不作為のまちづくり」と言えるかもしれない。何かを新しく作るというのではなく、残すという選択そのものが未来につながっている。

◆全国の地方都市で進む安易な「ミニ東京化」には危機感を抱いている。各地の魅力的な商店街が失われている。元々商店街とは、単なる商業施設の密集地ではなく、住まいと商業が一体化した建物の集合体であった。まちの機能から考えると、住むところ、働くところ、そして商業施設ができるだけ一体化しているのが望ましい。すると、人と人との交流が生まれ、かつお互いが自然に触れ合える環境が醸成される。

◆これまでのように、人が集まるところに店舗を出店しているだけだと、人口減少による影響を避けられない。また、インターネット販売の台頭により、リアル店舗における販売量も減退している。そこで、自社が主導する形で人を集める方法が模索されている。しかも、イベントのような一過性のものではなく、中長期的に人が集まれる場所の創出である。それがサードプレイスである。

◆観光立国を掲げている以上、外国人を呼び込むのであれば、それなりの魅力を提示しなければならない。ただそれは、特別な何かを用意するということではなく、すでにあるものを活用すればよい。そしてそれらは、あらゆる地域に存在している。まちづくりや地域活性化に取り組む人は、地域の魅力を色々な側面から掘り起こし、適切に伝えていく必要がある。「知っていれば行きたかった」。そのような場所を日本からなくすべきだ。

《感想》
以前の記事「12回目のコーチングを受けました」で、最近の僕は「土浦駅の近くにサードプレイスを作ってみたい」と思っていると書きました。そこで、サードプレイスの作り方を知りたくて本書を手に取ってみました。

サードプレイスというと、自宅や学校、職場で居場所を見失った人たち、具体的には家庭内不和に悩む人、不登校の人、仕事に適応できずにいる人などが特段の目的もなく集まり、コミュニケーションや相互交流を通じてストレスを発散したり、さらに一歩進んで創造性を解放したりする場だと認識しています。

ただ、本書の著者は、とりわけ食を中心とした、比較的大規模な商業施設のプロデュースを得意としており、サードプレイスという言葉をもっと広い意味で使っています(著者は全国各地で「屋台村」をプロデュースしている方です)。

この点で、本書は僕が期待した内容とはややずれていました。また、著者がこれまでにどんな施設を作ってきたのかは解るのですが、そこで人々の間にどのような交流が生まれたのかはほとんど語られていないのも残念なポイントでした。

著者は、「わたしが行っている街づくりは、まず”絵を描くこと”からはじまる」(p41)と述べています。本書に限らず、まちづくりの本を読んでいると、「まずは『まちのビジョン』を策定することから始めるべきだ」という主張をよく目にします。個人的には、果たしてそうだろうかと疑問に思うことがあります。

というのも、統一的なビジョンには、そのビジョンに賛同できない人を排除するという働きがあるからです。著者がプロデュースする屋台村でも、ビジョンに賛同できない店舗は審査に通らないと言います。まちには様々な考えや価値観を持つ人々が住んでいます。「ビジョンに賛同できないなら、このまちに住んではいけない」と言い放つことはできないでしょう。まちには包摂性が必要なのです。

統一的なビジョンを計画的に実現するという方法論は、魅力的な文化を生みにくいという別の問題もはらんでいます。そのようなメソッドは、なるほど効率的・単純で解りやすいものです。しかし、著者自身も気づいているように、「簡単な街づくりは、やはり簡単な結果しかもたらさない」(p71)のです。

僕は、文化とは無駄や冗長性の中からしか生まれないと考えています。旧ソ連は合理的な計画経済を自慢していましたが、西側諸国のような魅力的な文化を生み出せず、自国の味方を増やすのに失敗したことが、冷戦に敗れる一因となりました。我々は、計画経済が人間の創造力を削ぐことを知っています。それなのに、いざ実務の場面になると、無駄のない計画というものに頼ってしまうようです。

まちに栄える文化とは、まちに関わる様々なアクターが多様な思惑を持って、時に強め合い時に弱め合いつつ、矛盾や混沌、葛藤や偶然の中から非予測的・重層的に立ち上がってくるものであるはずです。それは、一部の誰かがビジョンや計画によってコントロールできるものではないと考えます。

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